初雪来る


二日間にわたって、強風が吹き荒れた。
バケツも植木鉢も吹き飛ぶ。
材木の覆いのブルーシートが風をはらんでバタバタ音を立て、今にも吹きちぎられそうだった。
大きく育っていた野菜は、みんな同じ方向に倒れてしまい、茎の折れるものもある。
外に出て、風の中を足をよろめかせて歩く。
ギンナンが落ちて、道端が黄金に染まっているところがあった。
吹き続ける強風は不安感をかりたてる。
心が落ち着かない。


やっと風が収まり、今日は穏やかな秋晴れになった。
朝7時から地区のゴミ出し当番に出かけた。
この地区には170軒の家があるが、各家庭から出るゴミを一箇所に集めて、市のゴミ収集車に持って行ってもらう。
そこで地区住民は順番でゴミ出しを管理することになっている。
当番二人が7時から8時までゴミ集積所に立ち、規定のゴミ袋であるか、袋に記名してあるか、分類したゴミが出されているか、などを点検する。
車が次々やってきて、ゴミを出していく。


「また出ているなあ」
やってきた住民の一人が二つの袋を見て言った。
名前が書いていない袋が、規定の時間より前から出されていて、これは不法投棄に当たる。
「毎回、このゴミが出るだよ。誰かねえ、地区の人ではないな。」
「夜の間に持ってくるのかねえ。」
「困ったもんだ。」
「こういうのは市の方で中を開けて、誰が出したか調べるだよ。」
「紙おむつが入っていますね。」
「赤ちゃんのいるうちなんだな。」
環境委員の住民も来て、嘆いていった。


今日の当番の相手はSさん。
1時間は、おしゃべりであっという間に過ぎていった。
ゴミ問題、食糧問題、農業問題、話題は尽きない。
ゴミ集積所にゴミ袋の山が出来た。
「せめて生ゴミだけでも、自分の家や地区で堆肥化できればいいんですがねえ。」
「紙類は分類して再生のほうへ出すことになっているのに、あれ、燃えるゴミのなかに入っていますね。」
落葉を入れて出している人もいる。


Sさんはこれが終わったら会社へ出勤だ。
「今日、初雪が降りましたね。」
「山は雪だね。」
Sさんは、最近地区の森林組合の山仕事で山へ入った。
役員を除く組合員は、一年に二、三回、山仕事をする定めになっているということだった。
常念岳も雪、鹿島槍が岳のほうは、もうすっかり真っ白だ。