休んだ先生の補欠授業


学校で先生が休んだら、その先生の授業時間には他の先生が代理で入る。
それを「補欠」の授業と呼んでいる。
中学校の場合、担当授業ではない空き時間は、教材研究や準備、テストの採点、生活ノートの点検や返事の書き込みなど、さまざまな仕事を行なうから結構忙しい。
そこへ補欠が入る。休む先生や出張の先生の多い日は、一日6時間制の全部が埋まってしまって、大変な状態になる。
補欠に当たった先生は、休んだ先生が予め用意してあったプリントなどを生徒たちに与え、自分たちで自習しなさいと言って、教室に張り付かずに職員室で仕事をすることも多い。
学校の生徒が指導困難な状態になったり、いろいろ問題を起こしたり、教師の指導がなかなか入らなかったりすると、
教師の中には、そこから逃避したいという気持ちの人も出てきて、たびたび年次休暇や病気欠席をとることがある。
そうなると休まない人の負担はますます重くなり、疲れがたまり、その結果指導は沈滞し、悪循環におちいっていく。
病気の診断が出て長期欠席になれば、非常勤講師が赴任することになるが、そうならない中途半端な状態がいちばん困る。
ぼくが青年教師だったころ、数学の年配の教師が病気がちで、毎週何日か休みを取っていた。
従って授業は進まず、生徒の学力はつかない。
担任のぼくは、なんとかしなければと補欠授業を買って出て、数学の教師でもないのに数学を教えることにした。
そうして何週間か教えたのだが、それが当の教師の勘にさわった。
そういうことをしてもらっては困る、
顔をつぶすのか、というわけで関係がおかしくなった。
ぼくの数学の授業は、中止。


1991年に、北欧を旅したことがある。
ノルウェースウェーデンの旅だった。
そのころノルウェーの学校事情を調べていて、こんな事実を知った。
20人クラスの小学校では、算数や体育の授業では教室にもうひとり補助の先生がつく。
教師の定年が67歳。
60を越した先生で体力が少なくなり、病院へ行くこともある教師はこの補助の役割を担っていた。
補欠の授業はどうしていたか。
先生が休むと、1時間であっても非常勤の先生が派遣され、その先生が授業を担当する。
先生がいないという自習状態をつくらない。
日本では産休の教師の代理や病欠教師の代理には非常勤講師が派遣されるが、日常の場合にはそこまで手厚くなされない。
ノルウェーのこの方法は、教員資格をとって正式に採用されるまでの若者の研修の場になっている。
この講師の経験で、鍛えられ、現場に採用されていく。


今、このシステムはどうなっているだろう。
ノルウェーでは小学校6年間の子どもの成績評価は出さないということだった。


スカンジナビア半島の脊梁山脈には氷河があり、そこを越えていく旅だった。
スウェーデンでは、日本から持っていったヒロシマの写真集を、宿泊した田舎の小学校に持っていってプレゼントしたりした。


最近、日本の子どもの学力の低下から、
学力をつけているフィンランドをはじめとする北欧の教育に注目があつまっている。
根本的に日本の教育行政には欠けているものがあるように思う。