巣にアシナガバチがいない

ブルーベリーという実を知っている?
「ブルー」は「青い」だね。「ベリー」はイチゴの類、「青いイチゴ」です。
イチゴといってもブルーベリーは小さな丸い実で、実の大きさは豆つぶほどかな。
熟すと黒っぽくなる。
熟れると甘いけれど、甘すぎないからいくらでも食べられる。


ブルーベリーの農場へ、ブルーベリー摘みに行ったときのことなんだ。
実をつんでは小さな黄色いバケツのいれていた。
木の背丈は1メートルほどかな。小さいね。
ときどき手のひらに、つんだ実をたくさんのせて、一度に口にほうりこんで食べる、これがおいしいね。
枝の間に手を入れて、実をつんでいたら、目に飛び込んできたものがある。
はっとして、あわてて手をひっこめた。
ありゃあ、ハチだ。ハチの巣だ。
目の前にハチの巣がある。
あわてて手を引っ込めたんだ。
巣には何匹かのハチがいて、ハチの子を育てていた。
ぼくの手は、巣の横をかするように動いたけれど、さいわい、ハチは平然としていて、さされなかった。
でも、あぶなかったなあ。


ブルーベリーの木に巣を作っているのに、農場のおじさんは、知らないんだろうか。
「おじさん、ハチの巣があるよ。」
おじさんに言うと、おじさんは平気な顔をして、そんなことは知っているよと言わんばかりに、こんなことを言ったんだ。
「ああ、巣があるよ。でも大丈夫。ハチは虫をとって食べてくれるからいいんだ。」
そのハチは、アシナガバチという種類で、よく見るハチだった。
ハチは、クモと同じで、虫などをとって食べてくれるから、ハチがいたら、木の葉を食べる虫を殺す農薬を木にまいたりしなくてもいいんだね。
だから、おじさんはハチを大切にしていたんだよ。
ブルーベリーの木にハチが巣を作っているということは、ブルーべリーには農薬をまいていないということでもあり、だから、実も安全というわけだね。
でも、ハチにさされたら痛いし、人によっては病院へ行かなくてはならないような重い症状になる人もいるし、だからさされないようにしなけりゃね。
さされないようにするには、巣にさわらないことで、どの木にハチが巣をつくっているか知っておく必要があるね。
巣を見つけると、すぐにとってしまう人が多いけれど、巣にいたずらをしたり、さわったりしなければ、アシナガバチは人をさしにはこないね。


ぼくの家にも、アシナガバチがあちこちに巣をつくっていて、
7月ごろ、犬小屋ののきに、アシナガバチが巣をつくっていた。
家のひさしにも、ガレージにも、イチイの生垣のなかにもつくっていた。
8月に、犬小屋を移動することになって、ぼくは小屋をひっぱって、数メートル動かした。
でも、ハチはおとなしかった。
小屋の真横を、毎日何回も通る。
巣から20センチほどのところ通過するんだけれど、それでもハチは静かだった。
どうしてこんなに、おだやかなんかねえ、人間は、悪いことをしないというのが分かっているのかなあ。
のぞいてみると、スマートな小さなアシナガバチが2匹巣の上にとまっていた。


9月にはいって、あちこちの巣を見たら、ハチがいない。
あれ、もう子どもたちは育っていったんか。
だから空き巣になったんかな。
それにしても、変だねえ。
犬小屋の巣をのぞいてみたら、そこもからっぽだ。
ハチがいない。
どこへ行ったんだろう。
ハチの巣にいる幼虫が、おとなのハチになるのは、8月ごろからで、
9月の巣にはハチはいるはずなんだ。
もぬけに空になるなんて、何があったんかな。
ぼくは、まわりを見わたし、ハチを探してみた。
でも、ハチの姿がない。


分からない。
なぜだろう。
地球環境の何かの変化が、ハチにも現れているのかな。
こういうのを、観察し調べてみたら、何かが分かるかもしれないね。