このごろ、朝の散歩の収獲は桑の実です。
朝五時になると、ランが、「朝だよ、散歩だよ」と、廊下で、
カタカタカタと、足音を立てるものですから、それが目覚ましです。
それを無視して寝ていると、ウォッ、と小さく小さく吠え、
さらに寝ていると、ワンと一声、
はい、はい分かったよと起きていくと、
ランはピョーンと飛び上がって喜びます。
散歩の途中でランが催すウンチを入れるために携行する赤い布袋には、ポリ袋と新聞紙を入れます。
そして今の時季は桑の実を入れるポリ袋を持って、2人と1匹は散歩に出発。
諏訪神社の手前の道ばた、諏訪神社より上に登っていった道ばた、あちこちに桑の木があり、
今が実のなる時季です。
昔は養蚕が盛んだった地域ですから、桑の木が意外にたくさん田んぼの畦やら畑の中に残っていて、
桑の実を採りはじめてから、あっちにも、こっちにもと、その存在が分かってきました。
枝にくっついた実は、初めは緑、やがて赤くなり、熟れてくると黒っぽくなります。
黒っぽくなったのは、さわるとぽろりと取れます。
ランを木につないで採っていると、ランは落ちてくる実を、草の中に鼻を突っ込んで食べています。
そのせいなのか、今日のランのウンチは、黒かった。
桑の実の熟れた一粒を口に入れると、ほんのり甘く、やわらかです。
摘んだ実を左の手のひらにためて、一杯になればポリ袋に入れます。
手のひらは果汁で赤紫色に染まります。
実の生っている木と、まったく生っていない木があります。
よく生っている木は鈴なりで、収穫量もほくほくです。
秋は、クルミに栗、ギンナンを収獲し、初夏の今は桑の実、
「早起きは三文の徳」、いやいや三文どころではございません。
桑の実で、洋子は桑の実ジャムを作っています。
桑の実ジャムは、ブラックベリー(黒スグリ)のジャムより、口当たりはいいです。
黒スグリには黒スグリの香りがあり、桑の実には桑の実の香りがあります。
このごろずっと天然酵母でパンを焼いているかあちゃんは、桑の実酵母でパンを焼く準備をしています。
手作りパンは朝食用です。
桑の実をビンに半分ほど入れて、水をビンにいっぱい近く注ぎ、そこに砂糖を小さじ1杯、
今日で二日目、桑の実の酵母菌が増えて、ぷくぷくと泡が起ってきています。
これまで酒かす酵母、ヨーグルト酵母、甘夏みかん酵母、バナナ酵母、玄米酵母、いろんな酵母を起こして、小麦粉をこね、
パンを焼くのにはまっているかあちゃんは、これから桑の実酵母パンを焼きます。
天然酵母でパンを焼く楽しみ、なんとも豊かな世界です。
自然界にある天然酵母で焼いたパンは、酵母それぞれの風味があって、たいへんおいしいです。
酵母菌がそこらじゅうにいっぱいいて、それでおいしいパンが焼けるのですから、自然界は不思議な世界です。