四川省、大地震


    雪ちゃんは大丈夫か


雪ちゃんは大丈夫だろうか。
四川省の大地震、ニュースが伝えるところでは、たいへんな被害だ。
雪ちゃんはたぶん師範大学で教えていて、地震に遭遇していると思う。
多くの学校が崩壊しているというから、彼女の学校も心配だ。
今も多くの学校で、児童生徒が倒壊した校舎の下敷きになっていて、
瓦礫の中から救出される子や、既に息絶えた子もいるという。
雪ちゃんのいるところは南充市で、成都から東へ170キロほどのところ。
地球内陸部では最大級の大地震で、遠く離れた北京や台湾でも大きく揺れたということだから、
阪神淡路大地震のエネルギーの30倍はあったのではないかと学者は言っている。


これまで雪ちゃんから来る手紙には、
いつもいつも彼女の頭を占めている、
これからどう生きていくか、
いろんな思い、願い、悩みが書かれていた。
四川に行ってからは、もっと勉強したいという思いもつづられていた。


大学在学中や卒業直後は、好きな音楽への夢を断ち難かった。
苦労して自分を大学に送り出してくれた父母を楽にさせてやりたいという願いもあった。
この春は、恋人ができ、温かい家庭を持ちたいという夢が書かれていた。


青春時代の特徴を最も豊かにもつ人で、
だから、いかに生きるべきか、
自分の人生と社会の人々への愛に悩み苦しむことが多かった。


どろんこの服装で朝から晩までつるはしを振るう人々や、
貧しく、悲しい身の上の人々に心を寄せ、
故郷の田舎で汗水たらして働く父母のことをいつも心にかけていた。


大学の森の中から飛び出してきた野うさぎが、
そこで働いていた土木作業員のスコップの一撃を受けて捕まえられたことがあった。
ぼくと二人、そこに通り合わせ、
その光景を見た時の彼女の顔の曇りと悲しみは忘れられない。


芸術に心をひかれ、
社会の現実に悩み、
寂寥に身をさいなみ、
感じ、考え、夢見、愛する、
そんな雪ちゃん。

無事でいることを祈っている。