あやまりに 行かねばならん

あやまりに 行かねばならん。
どこに いるやろ。
椿咲く 白壁の 土塀にそって、
春の日が 輝いていた、
十二神将ならびたつ 新薬師寺
秋の日は、
道場の岩場でクライミングもした。
なのにオレの想いが 風にただよい、
断絶をした。
おぼえてくれて いるやろか。


あやまりに いかねばならん。
どこに いるやろ。
遠い国から 引っ越しをして、
転入してきた おまえは、
一汗流した グランドを 満ちたりた笑顔で 歩いていた。
卒業して 三年目、
進路相談の手紙を受けたのに、
応えなかったオレ。
おぼえてくれて いるやろか。


あやまりに いかねばならん。
どこに いるやろ。
破れた登山ザックを 修理してくれた
カバン屋の にいちゃん。
足が不自由だった。
その苦労に報いず しあがりを疑ったオレ。
一週間後 あやまりに行こうと 思いながら、
あやまりに行かなかったオレ。
まだ 生きていてくれているやろか。


あやまりに いかねばならん。
どこに いるやろ。
西の山に 日が沈み
あかね色が 山の端に 残っている
あの向こう
西方浄土
そこにいる
おやじと おふくろにも。
不孝者が まだ この世に 生きとるよ。


あやまりに いかねばならん。
ぼくの 前を 通り過ぎていった 人たち。
ぼくを 育ててくれた 人たち。
そのとき そのとき よぎった想いが 
いろいろな かかわり方となり
まちがった行為となり、 
それが 傷を与えてしまうことがあった。
たぶん 確実に 忘れはしまい。


我が心に しっかり刻印され、
すまん、すまん、とつぶやく、
自責の想い。


あやまりに いかねばならん。
どこに いるやろ。