郵便ポスト



      郵便ポストと郵便受け


赤い郵便ポストが、街で見つけにくくなった。
郵便を出そうとポストを探して歩いていくが、どこにもない。
どこにあるんだーい。
人に訊いてみる。
さあ? どこかにあったかねえ。
少し距離のある郵便局まで、車ならすぐに行けても、徒歩ではてくてく時間もかかる。
昔は街のどこかに、あの等身大の太くて赤い胴体のポストが立っていた。
江戸川乱歩怪人二十面相シリーズの小説だったかな、
明智小五郎探偵が活躍する、子どもたちが時を忘れて愛読した小説に、
赤いポストの縫いぐるみを被ってポストになりすまし、敵の目をくらます場面があった。
愛嬌のあった赤い大きなポスト、
今はポストも小さな箱になって、ひょんなところにひっそりとある。
ときどきランと散歩する道の四辻に、以前は雑貨屋をやっていて、今は空き家になった古家があり、
その壁に郵便ポストがあるのを発見した。
こんなところにあったのか、まったく目に入らなかったよ。
ハガキを投入してから、
待てよ、このポスト大丈夫かな、と少し不安になった。
箱をよく見ると、「日本郵便」という新しいシールが貼ってある。
民営化してから貼られたもので、
まずは大丈夫だ。
日本の郵便ポストは赤色、
中国では緑色だった。


郵便配達の人のことを郵便屋さんと呼んでいた。
このごろ、お昼に1回、夕方6時ごろに1回、バイクの音を立ててやってくる。
時間外勤務なんだなあ。
我が家の郵便受けに配達する郵便屋さんに、玄関前につないであるランが吠えて吠えて、
郵便屋さんは怖くてどうしようかと困っていた。
若いお兄ちゃんだった。
すみませーん、ごめんなさーい、
と謝って郵便物を受け取る。
ランの吠え声とバイクの音が重なると、それ郵便屋さんがやってきたと、
我が家の家族は表に出て郵便を受け取ることが何回かあって、
これは申し訳ない、道から入ってすぐのところに、安心して郵便を入れられる郵便受けをつくろうと、
木っ端をさがして、工夫を重ね、細工して郵便受けを作った。
ポストの正面は、使い込んで真ん中がへこんだまな板。
そこに投入口を切り込み、
版画用の板に「Thank you」と彫り、
案山子(かかし)の浮き彫りを取り付けた。
屋根は壁板に貼った残りの小さな端材を重ね合わせて、緑の塗料を塗り、
それ以外の部分には、こげ茶色の防腐剤を塗った。


できあがった郵便受けは、なかなかいい感じだ。
やってきた郵便屋さんに、
これから安心して入れてください、
と声をかけたら、うれしそうだった。
今は緑の屋根に雪が積もっている。