研修生からの手紙


      企業の中で


K・K君から手紙が来た。


日本語研修の閉講式で、彼は代表であいさつした。
校舎の窓から日本の田植えを見て、
農夫が一人、
田植え機を使ってあっという間に終わらせてしまったのに驚き、
自分のふるさとはまだ手植えのままだと、そのなかで語った。
3ヵ月足らずの日本語の勉強なのに、彼の上達はめざましく、
かなり流暢に日本語を話せるほどになっていた。


彼は研修企業に入り、そして1ヵ月余りたった。
手紙を読んで、その企業が彼らを大切に処遇している様子が伺われ、
ぼくはひとまず安堵した。


言葉のまちがいをそのままに、
その手紙をここに書いておこう。


拝啓  先生別れてもう1か月になります。
お元気ですか。
おかげさまで、研修所で楽しく過ごすことができました。
本当にありがとうございます。
研修所にいるとき、先生は真面目に教えてくれました。
私は今、A市にいます。
工場へ来てからもう1か月になります。生活や仕事はだんだん慣れました。
月曜日から金曜日まで働いています。
休みの日は、スーパーへ買い物したり、近くの公園に散歩したりしました。
工場でいるとき、いつも7時55分体操をしていました。
8時に仕事をしていました。
毎日忙しいですが、日本語を勉強しています。
私の宿舎は和室です。
冷蔵庫やテレビやエアコンがあります。快適な生活にできます。
よかったです。先生は心配しないでください。
この間、テレビで長野県に6強地震が発生をしました。
先生は大丈夫ですか。日本の自然災害は大変です。
台風してから地震をしました。
日本で初めて台風と地震を感じました。
私はびっくりしました。とても恐くて心配でした。
私の工場で、研修生担当がいます。
分からないとき担当に聞きました。
担当は真面目に教えてくれました。
工場で働いたとき、分からない言葉を会社の人に聞きました。
会社の人も真面目に教えてくれました。
会社の人はみんなよかったです。
では、また書きます。どうぞお元気で。
私はきっと一生懸命に勉強します。
日本語の試験に合格をなると思っています。頑張ります。
祝、身体健康!! 
   <「K君の助詞が下手です」と担当を言いました。> 


K君は台風と地震に恐怖を感じた。
中国内陸部で育った彼にとって、初めての体験、
そうだろうなと思う。
研修所では、毎回、防災教育と地震避難訓練をする。
そのときの学習と訓練から実体験まで、わずか1か月足らずしかなかった。
災害についての心構えを少しでも育てていてくれて、よかったと思う。


手紙の文や語句の、間違いの箇所を、
返事に書いて、送ってやろう。
地震見舞いへの感謝をこめて。