家族への手紙


        日本語研修を終えて


明日、また新しい人たちが日本企業へ出発していく。
桜の咲き始めに日本に来て、満開から桜吹雪まで嘆賞してきた人たち。
日本語研修期間に桜花の季節が重なったことから、
みんなで何度も森山直太朗の歌「さくら」を歌ってきた。
閉講式もこの歌を合唱して出発していく。
受け入れ先の日本の中小企業はどんなところなのか、
彼らにはまだ分からない。


昨日、日本語学習最後の練習で、彼らは「家族への手紙」を書いた。
分からない言葉は辞書を引き、間違いだらけの言葉の使い方ではあるけれど、
三ヶ月の日本語学習の成果がここにあり、
家族への想いがあふれている。


チャンさんの、父母への手紙。

「親愛なる父母へ。
私はあなたたちを愛しています。
お母さん、のどの炎症、元気になりましたか。
うちに薬があります。薬を飲むことを覚えます。
私は日本にいます。今たいへんいいです。
お父さん、お母さん、体に気をつけて。
私は日本にいる三年間、孝行をつくすことができません。
私は不肖の息子です。
日本へ来るとき、初めて飛行機で、気持ちが良いと感じました。
今住んでいるところで、毎日新幹線を見ることができます。
まだ乗ることがありません。
ぜひ乗りたいです。
研修所で、毎日9時間勉強しました。
私の二人の先生はたいへん親切です。
ときどき先生は遊びに連れて行ってくれました。
日本のスーパーに入って、商品が高いと思いました。
でも服はあまり高くないです。
大部分が中国製でした。
日本で散髪すると高いので、友だちに散髪してもらいました。
私と友だちの関係は、とてもよいです。
研修所の先生は人気があります。
毎日私も楽しいです。
三年後、故郷で待つ父母家族の期待に応えることを、ここに誓います。
新しい容貌で、うちに帰ります。
お父さん、お母さん、いつまでも健康長寿を祈ります。」


チュウさんから、妻への手紙。
「親愛なる妻へ。
はるかに遠いあなたは元気ですか。
私たちの子どもは、いまたいへんかわいいですか。
父母は、元気ですか。
いま私は日本で、たいへんいいです。
心配しないでください。
一ヶ月、研修所でたいへん有意義な研修生活を送りました。
研修所の先生は親切で、やさしくて、親しみやすいです。
クラスでは、たくさんの人が、日本語が上手です。ですから私もがんばりました。
食堂の食べ物もたいへんおいしいでした。
でも、いまいちばんあなたが作る豚肉の醤油煮を食べたいです。
スーパーの食べ物は高かったです。
スーパーで、ひとつ時計を買いました。二千円です。
きれいで日本製の時計です。
たいへん好きです。
7日、私たちは会社へ行きます。
どんな会社か分かりません。
会社でも日本語をがんばって勉強します。
会社の人と仲良くつきあいます。
どうか元気で、私たちの子どもをよく世話してください。
さようなら、ひとりあなたをいちばん愛している人より。」