歴史を知ること


          二つの詩


歴史の勉強をしましたか。
何年に何があった、
誰がなにをした、
そんなのを覚えるのが歴史の勉強?
そうではありません。
人がどのように生きてきたか、探っても探っても、探りきれない、
気の遠くなるような、膨大な人間の歴史があって、
今があります。


昔の人びとは、どんな暮らしをして、どんなことを想っていたのだろう、
それを知っていくことが、
これから生きていくための支えとなり、生き方を考える材料となります。
人間はどのように生きてきたか。
二つの詩を紹介します。
一つは、お父さんと子どもの会話、
二つ目は、先生が子どもたちに話しかけています。
何度も声に出して読み、朗読してみたらいいと思います。
その詩を書いた人、その詩に出てくる人の、暮らしと心が伝わってくるでしょう。



       吹雪の夜の会話

             猪狩満直(明治31年生まれ 福島県いわき市


 ずいぶん ふぶくね 父ちゃん
 こんなに吹雪いたら小屋がのまってしまわないか   (のまれてしまわないか)
 のまったって平気だよ
 あしたも 父ちゃんが スコップで掘ってやるよ。
 だって 小屋が泣いてるだないか
 ああ 窓がみえなくなった。
 泣いてるだないよ
 歯ぎしりかんでるのだよ。
 だって つぶれたらどうする。
 小屋なんと そんな弱虫でないよ
 はしらが づうと土の中にがんばってるんだよ
 あら あっこの穴から
 つめていな (冷たいな)
 つめていなんて 言うもんじゃないよ
 つめていて 言うと 余計に吹きこむんだよ
 バカ野郎って 笑ってやるもんだよ
 だって 冷たくて ねむられねいだねいか
 だから 父ちゃんはさっきから言ってるじゃないか
 ぼうしか 風呂敷をかむって 寝なさいって
 明日は止むかい
 止むとも
 明日はいいおてん気で
 お日さんは
 悪者の雪さんを
 いじめてくれるとさ
 お日さんと
 雪さんと相撲とったら
 どっちが負けるかね
 さあ
 みんなでねむろ
 いち・に・さん



       原野の子

          桜井勝美 (明治41年生まれ 北海道岩見沢市)


 からだば こんごめて
 まえのもんの
 あしあとば 
 ふんでこうよ
 わきっこ みんでねえぞ

 からだば ひくくしろ
 ふっとばされんぞ
 まえのもんの
 あしあとば
 ふんでこうよ
 おくれんでねえぞ
 

    さぶろ いいか
    トヨコ いいか
    ふみお いいか
    じろうも いいか


 わきっこ みんでねえぞ
 まえのもんの
 あしあとば
 ふんでこうよ
 あなっこさ おっこちんぞ
 おちあいばし
 もう すぐだぞ
 はんぶんきたぞ
 てぶくろ
 かちん かちん
 がまんしろ


    さぶろ いいな
    トヨコ いいな
    ふみお いいな
    じろうも いいな


 吹雪っこ つよくなってきたぞ
 わきっこ みんでねえぞ
 あしあとば ふんで
 みんな
 おくれんでねえぞ
 からだば こんごめてな


   からだば こんごめて(体を かがめて)。 あしあとば(足跡を)。 わきっこ みんでねえぞ(わきを見るなよ)。 ふんでこうよ(踏んでいこうよ)。 あなっこさ おっこちんぞ(穴に 落っこちるぞ)