[愛犬と暮らす] いたずら


    いたずらというもの


一歳になるまでは、夜中でもランはいたずらをやっていた。
夜中に音がする。何だ?
行ってみると、
引きちぎられたトイレットペーパーが部屋中に散乱している。
棚のものが落としてある。
めがねケースが壊されている。
こんな時間に、何やってるんだ!
ぼくも洋子も、本気になって怒っていた。
しかられたランは、部屋の中を走り回る。


後部座席にランを乗せて、出かける。
途中で、ランを車に残して、店に入る。
するとランは、車を守るかのように、前の席に飛び移り、
助手席か運転席に座って、周りを眺めている。
そのうちに座席で寝てしまう。
ところが、トランクに何か食べ物があると、
親(飼い主)のいぬまに、活動を始める。
この前は、家に帰ってから食べるのを楽しみにしていた、
特性のアップルパイの二人分をぺろりと、
たいらげていた。
トランクへは後部座席から入れる車だから、
うかうか安心してられない。
そこに置いておいたぼくらが悪い。


天気のいい日は、ランは外にリードにつながれている。
ぽかぽか暖かい日は、寝そべっていても気持ちよい。
そのうちに退屈してくる。
そうすると、「あそぼ、あそぼ」
と呼びかけてくる。
ランのところへ行くと、
待ってました、とばかりに、
ランのおもちゃ、ボロ靴をくわえてくる。
「投げて」というわけだ。
そこで、靴をぽーんと投げる。
ランはダッシュして取りに行く。
これを数十回繰り返すと、息切れのしたランは、
やっと満足。

玄関の上がり口に置いてある靴のひもを抜き取ったり、
靴敷きを引き出したり、帽子をくわえておもちゃにしたり。
特に熱中するのは、スチールの食器で、ランのえさを入れるもの、
それを裏返して押すと、廊下や土間では、すいすいと滑る。
騒がしい音を立ててこれを始めると、止まらない。


最近、廊下に自分で毛布を広げて寝ていたランが、
出張中のぼくのベッドに、夜中上がって寝ていたという知らせが来た。
ほんまにもう。
あきれて笑ってしまった。


だが、一歳半ごろから、過激ないたずらが少なくなってきた。
いたずらだと言うけれど、犬にとってはいたずらでも何でもない。
興味関心があるものに、反応しているだけのことだ。


人間の子どもにも共通するものがある。
なぜ、そんなことをするの?
と腹を立てるのはやめた。
もう腹も立たない。
彼らは、自然な欲求で、
大人とは異次元の行動をしているだけ。
「いたずら」という行動も命のあかし。
ランは、こちらの気持ちも分かってやっているみたいだ。


いずれ、いたずらをしなくなるときが来る。
それは寂しい。
いたずら、やっていいぞ。