りんご収穫


     天からの恵み


今年の紅葉は長く美しかった。
安曇野をとりまく東と西の里山は、一昨日までまだ黄葉を残していたが、
北アルプスの山々が白くなってから、次第に雪は下りてきて、
今朝は里山も雪化粧になっている。
田野に積もるまでには至らない。
近くの野沢菜畑の収穫が続いている。


アキオくんの「おぐらやま農場」で収穫したリンゴをおすそ分けしたら、
なんとまあ、みずみずしくおいしいこと、と電話が返ってきた。
形も大小さまざまで変形もしているし、一個の色もまだらがあって完全に紅くはない。
でも透きとおるように甘い、天の恵みのすばらしさ。
多くのリンゴ農家では、リンゴを真っ赤にするために、リンゴに太陽光を当てる作業をする。
実の周囲の葉を取り除いたり、実を回したり、
だが、アキオくんのリンゴ園はそれをしない。
葉っぱが多ければそれだけ実に養分がいく。
見栄えが悪くとも自然の恵みをたっぷり活かす。


若い彼がリンゴ栽培を始めて今年で五年目、
経験は少ない。
けれども、作物に働きかけ、そのもっている自然の力を引き出し、
豊かな実りをもたらすという考え方にもとづく研究を重ねてきた。
夏、日の出前に、
天恵緑汁という植物酵素液のもとになる野生のヨモギ、クズの若葉を採りに行く。
自然界の植物には葉っぱに酵母菌がいる。
それを元にして天恵緑汁をつくり、リンゴの木にかけている。
天然酵母パンはこの酵母を使ってパンを作る。
干しぶどう酵母、柿酵母、野いちご酵母、玄米酵母、プラム酵母、赤松の葉酵母
季節によって、地域によって、採れる酵母菌をパン種にしてパンを発酵させ焼く、
それが天然酵母パン。
アキオくんの自然農法は、この酵母を使っている。
五月に摘果した幼いリンゴの実なども緑汁にして、
リンゴの木の葉っぱにかけている。
こうして木を強く健やかにし、おいしいリンゴを実らせている。


土作りも重要な仕事。
強い木は健康な根を持っている。
根っこの弱い木は、実もまた弱い。
堆肥をいれ、リンゴの枯木を薪ストーブで燃やした灰をまく。


農業は天候に左右される。
さいわい今年はいい気候に恵まれた。
リンゴもよくできた。
このリンゴを求める人が次第に増えている。
だが販売ルートを持たない彼の自立販売は、
まだまだこれからだ。