学校に歌声を


      明日に架ける橋


録画しておいたビデオを観た。
NHKで放送された、サイモン&ガーファンクルの歌、
「明日に架ける橋」をめぐるドキュメンタリー物語。
「明日に架ける橋」は、ベトナム戦争が泥沼化していくアメリカで生まれ、
反戦運動や黒人の公民権運動の渦中で大ヒットする。
そして世界中に広がっていった。
それから三十数年、
ニューヨークで9.11同時多発テロが起こった。
「明日に架ける橋」は、ジョンレノンの「イマジン」など、いくつかの歌と共に、
過剰反応の、不可解な放送自粛となる。
しかし、サイモンはこのような時代だからこそ、この歌をコンサートで歌い続けた。
世界に広がっていった歌は、南アフリカ共和国の黒人たちのなかでも歌われていた。
歌は、人種差別隔離政策に抵抗する人々を勇気づける。
サイモンは南アフリカ共和国の隣国でコンサートを開催し、
亡命してきた人びとや音楽家たちに「明日に架ける橋」を歌う。


やがて白人支配体制が崩壊する。
それから後、歌は賛美歌となって歌い継がれた。
学校のなかでも黒人生徒たちは合唱する。
その合唱の声の豊かさ、美しさ。
学校の中に、生徒の中に、歌があり、
歌によって友情で結ばれ、連帯し、
心をいやし、心を解放し、
勇気を奮い起こす。


アフリカの子どもたちの歌と踊りの表現が実に豊かであることは、
文化人類学者の川田順造も書いていた。
ボロを着て土まみれになって稼いでいるこどもたちが、
実に魅力的な声の表現力を持っていると。
発展途上国の学校の子どもたちが眼を輝かして合唱しているのを見ると、
希望を感じる。
本やノートが満足になくても、教室で魂をほとばしらせて歌う子どもたちは、
希望。


ビデオを見終わってから、思いは日本の子どもたちに移っていった。
本の学校に、音楽が生きているか、
合唱が存在しているか、
音楽の授業や学級活動の時間に、
歌が湧いてくるか。
教師も歌っているか。


歌を復活させることができたら、
たぶん今の学校の問題に解決の兆しが見えてくることだろう。