田んぼのドジョウ


       アイガモ農法の田んぼにドジョウ


タカオくんが、田んぼの周囲の草を刈っていた。
アイガモ農法でつくっていた、赤米の切り株だけが残っている。
水たまりが少し、水口の辺りにある


「昨日、テレビに出ていた田んぼはここかい?
ふーん、ここ、それでドジョウはまだいる?」
「まだいると思いますよ。
昨日、ほとんど獲って、松本大学の学生たちとドジョウ鍋にして食べたけれども、
たぶんまだ土の中にいますよ。」
「水がなくてもだいじょうぶなん?」
「土の中にひそんで冬を越すから、だいじょうぶですよ。
ドジョウのからだのヌルヌル、あれがからだを守るんです。
春になって、水が入ったらまた卵を産んで、増えます。」
「タニシはいない?」
「タニシは、いませんね。タニシも繁殖するといいですね。」


タニシやドジョウが、田んぼや水路から姿を消したのは、
農薬を使うようになってからだ。
ぼくが小学生だった頃、稲刈りのすんだ田んぼには小さな穴がぽつぽつと開いていて、
そこにタニシがいた。
タニシはおいしい蛋白源だった。
ぼくはブリキのバケツをもって、タニシをとりにいった。
我が家の田んぼではなかったけれど、
タニシとりは、だれも文句を言わなかった。


昨日の夕方、テレビのニュースを見ていたら、
あれ、タカオくん、タカオくんが出ている。
田んぼのなかで獲ったドジョウを入れた水槽を持って、
タカオくんがなにやら言っている。
もうひとり、コナンくんかな、
手で土を掘っている人が映っている。
すると中からドジョウがピョンピョンとはねて出てくる。


収穫したドジョウと、田んぼで飼って田んぼを守ってくれたアイガモで、
学生たちを招き、タカオくんは鍋料理をしたのだった。
田んぼにドジョウ、それが珍しくてテレビ局は地方ニュースとして放送した。


けれど、アイガモ農法についてはテレビではふれなかった。
短い時間だから省いたにしては、それが肝心のことだった。
どうしてこの田にドジョウがやってきたのか、
ドジョウが復活するということはどういうことか、
アイガモ農法ではどうしてドジョウがよみがえるのか、
テレビ局は、この肝心要のことを削除してしまった。


安曇野も秋から冬に変わっていく。
後立山連峰新雪が光るようになった。
霜も降りた。
一昨日の強風で、アキオくんのリンゴ園、たぶん大きな被害が出ただろう。


ガレージ兼納屋づくり、
屋根はガルバリウム鋼板の波板が安く購入できたので、
これで葺くことにした。
今日もよく晴れて、山々がくっきり美しい。