ガレージを建てる


        変化していく のろまな頭 


いま、2間×4間の広さの、物置にも使えるガレージを建てている。
主な材料は、奈良から持ってきた間伐材の丸太と家屋の古材で、
家屋の古材は、家の解体業者からたタダでもらったものだ。
業者の廃材置き場には、大和の大きな古民家に使われていたものもあり、
黒ぐろと歴史をしみこませた古材は、ほれぼれ惹き付けて止まないものがある。 
解体業者はそれらを燃やして処分する。
大和の古い庶民の文化が燃えてなくなっていく。


ぼくのもらったものは、レンタルの2トン車に積んで自力で運べるものだったから、
大きなものは混じっていない。
もらってきた柱のなかには、
昔その家で育った子どもたちが背比べをして身長を記したものもあった。
今度の引越しでは、太く重い材はトラックに積むことを断念して置いてこざるをえなかった。
惜しいことだが、しかたがなかった。


奈良に住んでいたとき、
もう一部屋増築しようと準備したけれども結局工事を断念して使わなかった材料。
だが、安曇野へもってきた間伐材と古材だけでは足りない。
地元のホームセンターで購入した杉の角材を加えた。
基礎石はコンクリートの羽子板という金具付きの既成のものを買ってきた。
風の強いところだし、冬は土が凍って盛り上がるから、
深さ四十センチ以上基礎を埋めたほうがいいと、
大工さんから聞いて、
石ころだらけの土をツルハシで掘り、セメントと川砂と小石をまぜ、
深さ四十センチの基礎を造った。
基礎石は一間間隔に設置し、
それらを水平に保つのと、8坪の長方形にするのが、なかなか難しかった。
何度も水準器とメジャーで計測しながらつくっていったけれども、
やっぱり誤差が生まれた。


考えは常にころころ変わって深化する。
初めは切妻屋根にするつもりだった。
少しやっては観察し、頭の中で組み立て図を描いては考え、
またやっては考える。
そうしているうちに異なる考えが湧いてくる。
雪が積もったとき、ガレージの雪はどこに落ちるかな。
母家の雪が落ちてきたとき、ガレージはどうなるかな。
よし変更、片流れにしよう。


思いつかなかったことに気づくと、
それまで考えていた組みたてが変わり、それ以外も変更しなければならない。
梁に使う予定だった大きな間伐材の丸太は、使い方が変わった。


桁のつなぎ方も、強度を考えながら接合部分を刻む。
やりながら頭が働いている。
頭の中を、いつも組み立て図が動いている。
寝ていても動いているらしい。
夜中に目が覚めたとき、ぱっと方法がひらめいたりする。
散歩しているときは、家々の柱や梁、桁を見ている。
それでまた、気づく。
トイレで気づくことも多い。
風呂の中で考えが変わることもある。
名案が浮かばないときは、
どうしらいいかなあ、と毎日眺めている。
何日かしてある日、パッとひらめいたりする。


素人の仕事だ、のんびりしている。
年をとってきたせいか、脳みその動きも体の動きもゆるゆるしている。
スローペースでも、考えの変化するのが不思議だ。
棟上げをどうする? いまこれが難問だ。
楽な安全な方法はどうしたらいいかな、
ゆっくり頭が動いている。
そのうち名案が浮かぶだろう。