チャレンジする若者たち


         アイガモ農法


アキオさんの田んぼにアイガモのヒナが入ったと聞いて見に行った。
一枚の田んぼ全面をおおって、ネットがかぶせられ、
田んぼの一隅にアイガモのヒナを遊ばせる囲いがあった。
そのなかを小さなヒナが泳いでいる。
全部で15羽、
かれらにとっては、ちょうどいい広さ、
成長するにつれて、囲いを広げて、やがて田んぼ全面が彼らの遊び場になる。
ヒナたちは、まだ産毛のままなのに、
足でかわいく水をかき、
同じ方向に群れで移動しては折り返し、
疲れれば巣箱に上がって休んでいる。
彼らの足が田んぼの土をかくことで、
草の生育を防ぐのだ。
除草剤をまかずに稲を育てる農法に、
青年農夫たちは純粋に果敢にいどんでいるのだ。


タカオさんの田んぼにもアイガモがはいる。
ところが、ヒナの半分がこつぜんと姿を消した。
朝起きてみると、約半数が消えていたのだ。
去年は、トビやキツネ、オオタカなどに襲われて、全滅に近い状態になった。
それが今回またも、ちょっと油断したあいだに、何者かにやられた。
タカオさんは、キツネではないかと言うが、
侵入した形跡も食べた痕跡もない。
消えた数は五十羽にもなる。
残り四十数羽は助かった。


梅雨入りして雨催い、
タカオさんの田んぼのネットを張りの手伝いに行った。
広い田んぼ、この一枚全部にネットを張るのかい、
これはまたまたたいへんだ。
さて、どうするぞ?
と思ううちに雨が降り出した。
天気予報は大雨注意報だ。
ネット張りは延期して、
ハウスの中でポットにエゴマの種まきをすることにした。
タカオさんと話しながら、小さな種を二粒すつポットにまいていく。
同じ作業をするこんなとき、
とりとめもない話だが、
話が弾む。


タカオさんは、稲作、トマト、エゴマ、いろいろな野菜の栽培にチャレンジする。
そのかたわら、地域の海外からの企業研修生に日本語を教えるボランティアにも出かける。
有機農業の研究会では、軽トラックを駆って東北地方までも出かけていく。
この時代、この社会、この国、
自分のできることをやる。
朝起きて、夜寝床に入るまで、
彼らはチャレンジし続けている。