リンゴの摘果


        手数をかけて


今日はリンゴの摘果だった。
アキオさんの家で、トラックに脚立を三台載せ、
ぼくはそれを運搬することになった。
ウーフさんは、新しい人が二人増えていた。
オーストラリアから来た男性青年と、
世界の各地へよく旅に出て、去年この農場へ来たことがある日本人女性のハナちゃん。
その二人と先に来ている三人、合わせてウーファーは五人だ。


桃の摘果の場合は、桃が二センチほどに育っていたが、
リンゴはもっと小さく、一センチぐらい。
典型的な実は、
中心の一つを囲むように三から五ほど一かたまりになってる。
そういう実は、中心を残して他を取り去る。
中心の実は、周りの実よりも比較的大きい。
ところが、例外的なのもたくさんあり、
中心の実がなかったり、小さかったり、
どれがセ中心の実なのか分からなかったりする。
そのときは大きいのを残して他を摘み取る。


男性青年たちが脚立に上って、
木の高いところの実をとってくれた。
女性は木の下の方をとる。
ぼくは脚立なしに手の届く高さまでをとっていった。


一本の木にはたくさんの実が成っている。
四月末から五月初めに花が咲き、
そのときに花摘みをして、花の数を減らした。
それでも結実の数は多く、今回の摘果でぐんと減らす。
そして日を経て、三回目のもっと減らす摘果をする。


このような手数の掛かる世話をし、消毒をして、
あの見事な日本のリンゴとなっていくのだ。
おびただしい手をかけて、秋を飾る輝く実を得ることができるのだ。


「このような作業をその適期に行うことは、
家族だけでつくっているリンゴ農家にとっては、
すごく困難なことですねえ。」
農場へ応援に来ている陽子さんと話しながら、実を摘む。
「薬をつかうやりかたがあって、一般的にはそれをしているようですよ。」
摘果作業を農薬で行うというのだ。


あのりっぱな日本のリンゴも、
農薬の力なくしてはできないのが現実なのだ。
薬を使わないやり方では、
たくさんの人が農場に出て、
朝から晩まで一粒一粒に心をこめなければならない。
老夫婦のリンゴ農家ではできることではない。


それだけに、低農薬のリンゴは、宝玉なのだ。