子どもの名前を呼ぶ

   
      名前を呼ぼう


会話の前に相手を名前で呼ぶ。
現代はこの回数がますます少なくなっているように思える。
親から、家族から、友だちから、
先生から、近所の人から、親戚から、
子どもたちは、一日何回名前を呼ばれているだろう。


生まれた赤ちゃんは、家族からしきりに名前で呼ばれる。
一日に何回も何回も。
呼ぶ声には愛情がこもる。
名前を呼んで、それから話をする。
子どもは呼ばれ呼ばれて、
自分という主体を育てていく。


幼稚園、保育園、小学校へ行くようになると、
そこでは先生から、友だちから、
名前やニックネームで呼ばれる。
呼ばれるごとに自分という存在を意識していく。


日本人の会話では、主語を言わないことが多い。
「図書館に行く?」
「行かないよ。」


「あなたは」や「(名前)さんは」がない。
「わたしは」がない。
日常会話はほとんどこのようになっている。
分かりきっていることは言わない。


主語の名前を省くのは日本人の会話の特徴だが、
きょうだいが多いときや、
たくさんの仲間のいるところでは、
名前を呼ばないと分からない。


疎外されている子ども、
一人ぽっちの子どもは、
名前を呼ばれることが少ない。
その日一日、誰からも呼ばれず、話しかけられることもなかった子もいよう。
仲間との関係や家族との関係が薄い現代、
家族と暮らしをつくらない子ども、
友だちと遊ばない子どもは、
名前で呼ばれない。
生活の中に人との会話がない。


先生、一日に1回以上は受け持ちの子どもひとりひとりを、
名前で呼んで、一言会話してください。
クラスで子どもたちが名前で呼び合う遊びを、
取り入れてください。
名前を呼ぶ集団ゲームもあります。


名前を呼ぶことで、人を意識し、
人を尊重していく仲間が生まれていきます。
名前を呼ばれることで、人との関係をつくり、
相手に近づき、
自分を認識していきます。
名前を呼ぶ、そこから始まります。