人間の孤独と希望

michimasa19372009-01-14



                みんなでお話


「『村』というのは『群』なんだね。」

「群れているところ、群がっているところだね。
群れなけりゃ、生きていけなかったんだもの、人類は。
獲物をとるにしても、脚はオオカミのように速くはないし、
ライオンや熊のように強くはないし。群れで知恵を働かすしか獲物をとれなかったからね。
農業をするようになって、開拓するにも、耕すにも、仲間がいなけりゃ、作物はとれなかったもの。」

「それで村ができたんだね。」

「人間は、仲間なしに生きていけない生き物なんだなあ。」

「助け合うことなしには、生存できない生き物ですね。」

「村人がたくさんいたら、力を合わせて、家も建てられるし、堤防を作って水害を防ぐようにもなる。」

「それから、子どもが生まれ、孫が生まれ、村のあと継ぎができ、若い力が村を守るようになって、何百年何千年と村が続くようになっていったんだね。」

「戦争や災害の被害者は、かならず集まって村をつくるね。一人だけだったら、死んでしまう。」

「難民キャンプとかできるのも、そうして生き抜こうとするからなんだ。」

「精神的にも、人間は孤独がいちばん怖い。仲間がいる、友だちがいる、家族がいる、それが支えになるよね。」

「孤独は恐ろしいね。ひとりぽっちは寂しいよ。むなしいよ。生きていく力がなくなるよ。仲間はずれはつらいよ。」

「仲間はずれや、いじめはほんとにつらいね。死にたいぐらいに。仲の良い友だちがほしい。」

「人間は家族や友だちや、仲間がほしい。それなのに、一人で暮らす人が多くなってきたのはどうして?」

「都市ができて、若者が村を出て都市に集まるようになり、大家族がつぶれちゃったからかな。」

「一人暮らしの高齢者が増えていますね。」

「しかし都会でも若い人が一人で暮らし、閉じこもる人も多くなっているよ。」

「ひとりで生活していても、隣近所の人や町の人とお付き合いしていたら、孤独にはならないけれどね。」

「同じ境遇の人が寄りあうと、精神的にも楽だし、いやされるし、励まされもする、そして助け合いもできます。」

「ホームレスになると、やはりホームレスの人同士が近くに住むようになるね。」

「ホームレスが集まって、仲良くなって会話が生まれ、助け合うようになると、希望が生まれてくるかもしれない。」

「日本にもアメリカにも、ホームレスがたくさん生まれているね。世界の先進国で、ホームレスが生まれている。ところが発展途上国の、アメリカや日本よりも貧しい国で、ホームレスがいないというのはどういうわけだろう。」

「ほんとにいないの? 目に見えないだけではないですか。」

「でも、そんなに問題にならないでしょう。」

「もし発展途上国にホームレスが少ないとしたら、それはなぜ?」

「少ないかどうかわからないけれど、家族の精神的なつながりが先進国よりも強いんじゃないかな。家族がほっとかないと思うよ。」

「家族の助け合いの関係が強いということかな。」

「貧しければ貧しいなりに助け合っているんだと思う。」

「人類が、生きていくのも精いっぱいの時代が長く長く続いたのに、孤独な『宿なし、職なし、食なし』を大量に生まなかったとしたら、どうしてなんだろ?」

「貧しいからこそ人手が必要だったし、助け合ったんだ。」

「しかし、実際に、長い人類の歴史のなかには、大飢饉がいくらでも起こっているよ。そうしてものすごいたくさんの人が死んでいるよ。少なくとも、現代では、戦争以外はホームレスになっても、大量に人が死ぬということはないからね。」

「干ばつとか、冷害とか、災害の時は、人間の小さな助け合いでは、どうしようもなかったでしょう。人も大勢死んだでしょう。そうでないときは、やはり乏しくても分かち合って助け合って生きていこうとしたんだと思いますよ。」

「現代のように、文明が発展すると、欲望も大きくなり、欲望を満たすために一人占めする手段も進歩してきたからね。」

「その反対に、苦しんでいる人を助けようと、海を越えていく人もいます。」

「アフガンで殺された伊東さんもそういう人でしたね。マザー・テレサもそうでした。」

「日本が戦争に敗れ、街は空襲で廃墟になって、どん底の生活になった1945年から、都会では焼け跡にバラックを建てて人は住んでいました。食べ物もなく、栄養失調で死ぬ人もいました。親のない戦災孤児もたくさんいました。それでも人々は助け合って、希望をもって生きていこうとしていました。」

「希望というのは、人と人とのつながりのなかから生まれてくるものかな。」

「危機や困難は、生き方を変えなさい、そうすればもっとよい道があるということを示してくれているのかもしれませんね。」