タニシを食べたい


         タニシ(田螺)を食べたい


アヤコばあちゃんから電話があった。
そちらに、タニシがいるかい。
タニシ? この辺の田んぼで、見たことないねえ。
昔、田んぼにタニシはつきもので、稲刈り跡の田んぼにはタニシの住む小穴が無数に開いていた。
少年時代、水の涸れた初冬の田んぼでタニシとりをしたものだ。
煮てから針で中身を出し、もう一度炊いて味付けしたタニシは、うまかったし、蛋白源としても最高だった。
今は殺虫剤や除草剤を使うから、田んぼにタニシがいなくなった。
タニシもいないし、メダカもミジンコも住まなくなったねえ。
山の麓の休耕田にいないかなあ。
いろいろ訊いたけどね、いないのよ。
有機自然農法の田んぼにはいるかもよ。
孝雄君たちは合鴨農法で米作っているから、聞いてみたら。


タニシはね、水を浄化するのよ。
へえ、そうなの。
調べてみたら、そういう実験をしている人がいる。
植物性プランクトンで濁った水へタニシを入れたら、たちまち澄んできたという。
タニシが有機物やプランクトンを食べてくれるらしい。
水の浄化ということでは、ユスリカの幼虫も、水の中で有機物を食べて水を浄化するらしい。
ユスリカは「蚊柱が立つ」という言葉になっている蚊の一種で、
夏の夕方などに群がって同じところでぐるぐる回りながら飛んでいる。
人を刺したりはしない。
水中から出て羽化したオスは、三日の命しかなく、
何も食べずにただ子孫を残すのだという。
人を刺す蚊を殺すためにユスリカまで殺していないかなあ。


水の浄化では、葦の働きが大きい。
葦が数十メートル群生している小川があったが、
その群落を抜け出てきた水はきれいだった。
自然の力には自浄作用がある。
それを三面コンクリートで覆って、浄化作用を奪いとってしまっている。


ばあちゃん、タニシをどうするの? 養殖するのかい。
増やしたいのよ。それに食べたいし。
どこかにいるだろうね。どこにいるかなあ。
最近、このあたりの小川や水路を見ても、生き物の姿はないものなあ。


インターネットで調べたら、「タニシの駆除」という文字が飛びこんできた。
へえ、何?
アフリカ産のジャンボタニシが日本の田んぼでイネを食べるので、駆除しているのだという。
ジャンボタニシというのはスクミリンゴカイという名前だと書いてある。
日本に持ち込んだけれど、臭くてダメだったとかで捨てられ、
それが繁殖しているということだ。


日本の昔のタニシ、自然な田んぼで増やせないかねえ。
休耕田を使えばいけるよ、きっと。
タニシが増やせて、鳥もそれを食べて元気になり、水がきれいになる、
一石三鳥だよ。いいねえ。