技能実習生の苦悩と悲哀

 

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 子豚がたくさん盗まれるという事件があり、犯人のベトナム人技能実習生が逮捕されるという事件が先ごろあった。

 なぜそんなことをしたのか。彼らは、技能実習生として日本に来て働いていたが、コロナの影響で受け入れ先から解雇され、仕事がないから、行き詰まって犯行に及んだのだと思われる。

 技能実習制度は政府の推進してきた政策の一つだ。日本人の働き手が来ない企業にとって、安い賃金で長時間働いてくれる外国の若者はありがたい存在だ。研修制度のときから、日本の企業や農業経営者は、中国人から始まって、安い報酬の若い労働力を中国や東南アジアから得てきた。その時から、いろんな問題が起きており、人権がふみにじられ、奴隷労働だと世界から告発されもしている。利用できるだけ利用して、困ったらポイ捨てするのか。

 今回の窃盗事件から思うのは、そこまで行き詰まらせた、日本の行政と雇用者と社会の意識の問題だ。

 

 日本語教室に来ているベトナム人のディン君と話をした。彼も豚の窃盗を知っていた。あの事件で、技能実習生に対する日本人の見方が、よくないほうに動く可能性もあるかもしれない。

 ディン君たちは20数名、農業実習生として安曇野に来て、キノコの生産と出荷の仕事にたずさわっている。彼らの寮は住宅街の中にある。さすれば、隣近所の人と朝晩に出会うことも多いだろう。その人たちが、偏見をもったり、よくない印象を抱いたりしたら、マイナスだ。

 「近所の人と、あいさつしている?」

 「する人もあるし、しない人もあります。」

 にこやかに あいさつすれば、お互いの間に通い合うものが生まれる。

 「相手があいさつしなくても、こちらからあいさつしたほうがいいよ。」

 そこで思った。日本に来るにあたって、彼らは数か月の日本語学習をしてくるが、そこで日本の文化についても学ぶはずだ。日本の文化のなかの、日本人の挨拶について、事前の研修でどれだけ学んでいるだろうか。

 ベトナム人の若者から、「おはようございます」「今日はいい天気ですね」「こんにちは」「さようなら」「おやすみなさい」「おつかれさまでした」「ありがとうございます」などの挨拶を受けると、日本人もうれしくなるよ。

 親愛の気持ち、感謝の気持ち、ねぎらいの気持ち、いたわりの気持ち、感動した気持ち‥‥、それらを言葉に表すことで、信頼関係が生まれ、好感も深まる。

「この人たちは、いい人たちですよ。」

 差別や偏見の下地をつくらないように、心の交流は地域の人たちとの関係に欠かせない。

 技能実習生が日本の労働現場に入るとき、まず「日本の文化」について学び、身に着ける、その研修が欠かせない、その重要性を行政と受け入れ企業のほうに提案しようと思っている。