「田舎の四季」という歌

 

 野を見回すと、水田の間に麦畑もある。麦は茶色に稔っている。昔から麦畑にはヒバリが巣をつくった。ところが今、ヒバリの姿がない。以前は今頃、麦畑から揚げ雲雀がさえずりながら、空にのぼっていたのに、ああ、この頃、ヒバリの声も聴かない。さらにツバメの姿もない。

 ふっと子どもの頃に聞き覚えた歌が、頭に浮かんだ。「田舎の四季」という歌。

 

  道をはさんで 畑一面に 麦の穂が出る 菜は花ざかり

  めぐる蝶々 飛び立つヒバリ 吹くや春風 たもとも軽く

  あちらこちらに 桑つむおとめ 日まし日ましに はるごも太る

 

  これが一番の歌詞で、春から夏秋冬と四番まで歌詞がある。小学生の頃、ラジオでこの歌を聴いて、一度にメロディと歌詞の一番が頭にしみこんだ。素朴なメロディの繰り返しで、なつかしさが心に湧き、簡単に覚えてしまった。その歌が、野を歩いているとフッと頭に浮かぶ。

 明治の時代から歌われてきた歌、強い郷愁を誘う歌。

 二番の歌詞は、

   

  並ぶすげがさ 涼しい声で 歌いながらに 植えゆく早苗

  長い夏の日 いつしか暮れて 植える手先に 月影うごく

  帰る道みち あと見かえれば 葉ずえ葉ずえに 夜露が光る