朝六時、日の出が早くなった。もうすぐ日が昇る。
野の道で、塚原から歩いてくる、いつもの散歩おじさんに出会う。
挨拶をかわす。
「今日は温かいですねえ。」
「温かいですねえ。ヒバリが鳴きだしましたねえ。」
「えっ、ヒバリ? ほんとうだあ。ヒバリだあ。」
麦畑の上に飛び上がってきたヒバリが三羽。麦はまだ小さい。
ぼくが小学三年生のころだったか、河内のヤンチャ連中は、音楽の時間になると、「ヒバリの歌」を先生に催促した。先生はオルガンを弾く。ヤンチャ連は声を張り上げて歌う。
ピイチク チイチク ピイチク チイチク
ピイチク チイチク チイチ
ヒバリが鳴きだす むぎばたけ
簡単も簡単、これが一番。
なんでこの歌がヤンチャ連に気に入られたのか、わからない。
たぶん鳴き声のところが、歌っていて気持ち良いのだろう。
急に温かくなってきて、シマヘビが冬眠から覚めて、出てきた。一メートルほどのシマヘビが道端に長く伸びて、頭を草の間に突っ込んでいる。ストックで触ってみると、少し動いたが、逃げようとしない。昼間は温かかったが、夕方冷えてきた。冷えて動けなくなっているのだと思った。このままここにいたら、車にひかれるか、カラスにやられるかすると思ったから、いったん家に帰って袋をもってヘビ救出に行った。ところが、ヘビは姿を消していた。
愛犬リキを連れて、矢口さんがやってきた。
「ヘビ、救出です。」
「ヘビね。モグラの穴に頭を入れると中に入って行って、モグラを退治してくれるよ。庭のモグラ、一匹もいなくなるよ。ヘビ、食べるとおいしいよ。」
「モグラを食ってくれますかあ、それはいいなあ。我が家の畑、モグラだらけでねえ。」
けどねえ、ヘビを食べるなんてできないですよ。