窓ガラスにぶつかって、跳ね跳び、死んでしまったキジバト、土に埋めてやろうと思った。だが、毎日氷点下、ハトの体は凍結している。
ひょいと思った。この雪のなか、鳥も獣も、いったい何を食べているのだろう。
近くにキツネの巣がある。キツネも食べるものが無いだろう。キツネは、畑の半分が耕作放棄地になり、ススキや草が背高く繁茂しているところに穴を掘って住んでいる。何回か親ギツネと子ギツネが遊んでいるのを見たことがある。
そうだ、このハトさん、他の動物のために役立ててやろう。一つの小さな命でも、別の命に役立つだろう。循環の生態系だ。
夕方の散歩の時、ハトをポリ袋に入れて、キツネの巣近くに持って行って雪の上に置いた。ハトの羽は柔らかいが、体は固まって置物のようだ。
氷点下10度、道路も凍結しているところがある。車の運転が危険だ。
今朝、ハトを置いたところへ行った。雪の上にまっすぐな一本の足跡があり、ハトは消えていた。
ハト一羽では、キツネの家族の空腹は満たされまい。でも生きながらえるために、いくらかは役に立っただろう。
それにしても、それにしても、ウクライナは厳しい氷点下のまっただなかだ。住む家、商店、学校、保育所、病院まで、ロシア軍に攻撃され、破壊され燃やされ、温かい部屋もなく、小さな子どもも年寄りも殺されている。