「戦争は女の顔をしていない」 <3>

 

 

 女性兵士の次の声もここに取り上げておきたい。。

 

 「兵隊の一人が、銃を撃つのをいやがったんです。『できない、わたしは人を殺したくない』

 彼は軍事裁判にかけられ、銃殺でした。

 あたしは、自分が殺した人の顔を見なかった。今は、自分が殺そうとしていたのだということが分かります。私は自分の魂のために祈ります。夢の中で、私の殺してしまった人たちがやってきて、私を見るんです。」

 

 「野も森も燃えていた。空襲の中で、ヤギが一頭、やってきて、私のそばに横たわったんです。伏せていた私たちのそばに、そして大きな声で鳴くんです。空襲が過ぎたら、私たちに付いてくるんです。体を人の体に押し付けてきます。動物だって、こわいんです。」

 

 「晩秋に渡り鳥が飛んでくるでしょ。その列がとても長く伸びているの。味方の大砲も、敵の大砲も撃っている。でも鳥たちは飛んでくる。

 こちらきたら危ないよ。ここは撃ちあってるんだから、どうすればいいの。鳥たちは落ちてくる、地面に落ちてくる。」

 

 スヴェトラーナの探索、聴き取りは7年間つづいた。

 「長い旅路、数百本のテープ、数千メートル分の録音、

    何か理解できるのではと、のぞき込んだら底なしの淵だった。

 地上にはこれまで何千と戦争があった。戦争は、これからもずっと人間の本質に触れるもっとも主要なことなのかもしれない。今も、何も変わっていない

 ‥‥道はただ一つ、人を愛すること、愛を持って理解しようとすること。」