久しぶりで朝のウォーク

 

両ストックを突いて道に出ると、東の山から日が顔を出した。

昨日から、朝の散歩の距離を延ばしている。

稲刈りの済んだ田の中の道をゆっくり歩いていく。

今日は、快晴だ。

白鷺が田のなかに降りている。

久保田の桜の樹まで行って、そこから引き返す。

横の田圃から、人が現れた。さっさかおじさんだ。今年は一度も会っていない。歩くスピードが速いのでぼくは「さっさかおじさん」と呼んでいたが、今朝はえらいゆっくりだ。

 「いやあ、久しぶり、お元気ですか」

 「いやあ、ダメだ、体がもうダメだ。あと5年だよ。」

 「私もねえ、去年秋から、次々と病気で、ダメでしたよ。ウォーキング、昨日から、ちょっと足を延ばせるようになりましたよ。」

 「田んぼ6町歩、やってただがね。もうダメだよ。人にやってもらっているだ。これから、えらいことになるよ。農業の後継者に若者がならないだ。」

 大規模な圃場整備がなされて、この地は整然とした区画割の田畑になっている。機械が入りやすく、田植えも稲刈りも、耕うんも実に機能的になっている。そうしないと、農業の未来が危ないと考えられて、手が打たれてはいる。しかし、今あちこちで見る農業者は、やっぱり若者が見当たらない。腰の曲がったおばあちゃんが、がんばっている。我が家の周りの田圃はヒデさんの田んぼだ。ヒデさんは、すごい大型機械を駆使している。昔なら家族総出で一日かかるような稲刈りを、一人で機械を運転しながら、一時間ほどで、脱穀も併せてやり終えてしまう。米を作れなくなった農家の田んぼも、ヒデさんは引き受けてやっているのだろうか。だが、ヒデさんも高齢者。いつまでも元気が保障されてはいない。

 サッサカおじさは、つぶやく。

 「国葬によ、莫大な金使ってよ。政府の馬鹿どもめ。」