新船海三郎君は「日日是好読」(本の泉社)で、斎藤美奈子著「中古典のすすめ」を取り上げている。
「斎藤美奈子は文芸評論としてはめずらしく人気がある。本書は60年代から80年代にベストセラーになった48作を、いまも再読に耐えられるかどうかを、『名作度』『使える度』で採点したもので、結果を見るとなかなか興味深い。その尺度で星三つを獲得したのは次の9作。
山本茂美『あゝ 野麦峠』、
鎌田慧『自動車復讐工場』、
堀江邦夫『原発ジプシー』、
これを見ると、青春小説が2、教育ものが2、そして差別、労働、戦争のルポである。
『兎の眼』の評価が高いのは、弱者に寄り添い、差別と対決する強さ、障がいの有無を問わずに共生する思想など、教育の思想がえがかれている点にある。
子どもの貧困率17パーセントと言われる現代、子どものために、大人は何ができるのかを本書は考えさせる。
名作が古典になり得るには、常にそこに立ちかえって、思考の原点、基点を確認し、心を新たに現実に向かうことを促すところにある。そういう著作を一冊二冊持つことが、どれほど人生を豊かにし、また逆境から奮い立たせてくれることか。」
新船は、こう嘆いている。
「月に一冊も読まない人が多数の社会に、いったいどんな未来があるというのだろう。
戦争や差別、貧困を横目に、‥‥」