彼岸花咲く

 

 

 今年も、庭の曼殊沙華が花開いた。十数本が固まって咲いている。

 この花は彼岸のころに咲くから「彼岸花」とも呼ばれている。細い薄緑色の茎がまっすぐ地面から、二、三十センチぐらい伸びてきて先端に赤い花を開く。

 十七年前、奈良県御所市に住んでいた時、初秋の郷を歩くと、あっちでもこっちでも彼岸花が咲いていた。我が家は名柄という郷にあり、ぼくは裏の畑を借りて耕していたが、その畔は、夏が過ぎて秋になったとたん、音もなくにょきにょき伸びてきた彼岸花が畑を取り囲んだ。 

 安曇野に引っ越してきて初めての秋、こっちは彼岸花が咲かないなあ、と寂しい想いもしたが、近所の庭にいくらか彼岸花が咲いているのを見て、「おっ、こっちでも咲いている」とうれしくなり、咲き終わってから球根を数個もらってきて庭の土に入れた。いまそれが咲いている。

 猛烈な台風が襲来するということで、庭の柿の実が気になる。たわわに実って大きくなりかけているときだから、枝が折れないように、支柱を立てて、枝を固定した。トマト、ナスにも支柱を立てて固定した。白樺の枝を切り取ってあったから、それを利用した。作業をしているときも、蚊が腕や足首にまといついて、刺そうとする。この蚊も、ここに引っ越ししてきたころは、ほとんど気になるほどはいなかったが、その後庭に畑をつくり、庭木や草花を植えて、すっかり緑のガーデンになったら、虫の楽園に変化しつつある。この夏、どこからかセミがやってきて、ヤマボウシの幹にとまってジーと鳴いたが、それ一回きりだった。

 蝶、トンボ、蜂、クモ、コオロギ、バッタ、蚊、ミミズ、ゲジゲジ、カタツムリは増えた‥‥

でもまだまだ少ない。ぼくが子どものころ育った河内は、動物の宝庫だったが、今住んでいる安曇野は、圃場整備した田んぼに稲が育ち、農薬や化学肥料が生物を限定してしまっている。

 我が家の周囲は今、稲刈りのまっさかり。すべて機械化されている。

 台風が直撃するかもしれない。それまでに刈り取ってしまおう。ヒデさん一人、大型機械を操縦し、数時間で大きな田んぼはきれいに刈り取られた。