今朝、
夜明け、
満月が西山に傾いていた。
一晩輝いていた満月、その表面が見える。
東山を見ると、しののめは紅く染まり、
西山はモルゲンロートを待っている。
予感する。
西山の常念岳に満月が沈むとき、
東山の美ケ原から日が昇る。
沈む満月と昇る太陽とが一致し、
西山はモルゲンロートに染まり、東山はしののめが輝き、
太陽と月は交代する、天体ショーの始まりだ。
氷点下五度、風なし。
ぼくとランは、野のベンチに座って、
これからはじまる荘厳なドラマを見守っていた。
気になるのは西山の上だけにかかっている薄雲だった。
雲は次第に少なくなりつつあった。
が、
残念、月は雲の中に入った。
雲を通して、それでも月は輪郭を示していた。
カラスが数羽、西に飛び、
日が山の端から顔を出した。
月は雲に消えていたが、
アルプスは紅に染まった。
寒さが体にしみた。