月が沈み、日が昇る

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 朝6時前、野を歩き始めた。夜が明け始めている。

 西の山へ、満月が死沈んでいくところだ。北アルプスの雪山にはまだ朝日は当たっていないが、山々は浮かび上がっている。

 昨晩、見た、ビーバームーンの半影月食。その満月が一晩空に輝きつづけ、今沈んでいく。

 11月の満月は、ビーバームーンと呼ばれているらしい。ビーバーが冬を越すために巣作りを始めることと、ビーバーの捕獲が始まることから、この月は欧米でそう呼ばれてきたらしい。

 半影月食というのは、地球の影に月が半分隠される現象だそうで、昨夜、外に出て満月の上がってくるのを観察した。東山から昇ってきた満月は大きく、煌煌と輝いていた。満月の左上が少し暗いだけで、見事な円形はくっきりとしていた。

 沈みゆく月を見ながら、ランと歩いた。こんなに大きな月を、夜明けに見たこと、あっただろうか。

 夜明けの散歩をしているご婦人に出会った。

 「見事な満月ですよ。もうすぐあの山に沈みますよ。」

 ぼくは声をかけた。

 「沈むまで時間がかかりますか。」

 ご婦人は言った。

 「またたくまに沈みますよ。」

 ぼくは応えた。彼女はどんどん先へ歩いて行った。

 月は山の端にかかると、みるみる姿を没していった。彼女はそれを見ながら歩いているだろう。月のスピードを感じるひととき。

 月が昇る東山の位置は、夏よりも北に移っている。

 月が沈む西山の位置も、夏よりも北に移っている。

 太陽が昇る東山の位置は、夏よりも南に移っている。

 太陽が沈む西山の位置も、夏よりも南に寄っている。

 太陽は、南半球の方へ、移動している。

 冬が来た証し。

 

 六時半過ぎ、日の出。今朝は雪山のモルゲンロートが美しい。