モルゲンロート

画像のプレビュー

 

 

夜明けの雪嶺。

神々しいモルゲンロート。これまで何度も見てきた。けれど毎回異なる輝き、新たな感動がある。

モルゲンロートは二度ある。

最初は太陽がまだ東の山の向こうにあり、夜の名残りがうっすらと野を包んでいるとき。

西の常念岳には日が当たっていないとき。

直接日が当たっていないのに、それまで夜だった雪嶺が西の夜明けの空に、いくらかのピンク色を帯びて浮かび上がってくる。人影なく、飛ぶ鳥見えず、静寂、しんしんと冷える。このわずかな時の流れのなかで、山がひそかに輝く。その時の神秘的な景観は胸に沁みる。これが一度目のモルゲンロート。

ぼくは雪を踏んで野を行く。東の「美しが原」の山極が明るくなってくる。

一度目のモルゲンロートの色が変化し始め、雪山の頂上に日が射しはじめる。日の出はまだだが、山の高みに日が射し、それが次第に山肌を下りてくる。第二のモルゲンロートの始まりだ。雪山は紅く染まり始める。

やがて直射の日の光、第二のモルゲンロートは山を包み、麓の森を照らし、下界を包み込む。そうして野の夜は開けた。モルゲンロートは消えていく。朝だ。

何度記憶にだぶらせても、新鮮な感動は変わらない。