ランをつれた朝夕の散策で、この冬に入って二回キツネの疾駆するのを見た。日の出前は西の山の方へキツネは跳び、夕暮れは山の方から疾駆してきて不耕作地の草むらに消える。この不耕作地にねぐらがあるにちがいない。圃場整備の工事前には、もっと下の不耕作地に巣があった。工事によって木が伐られ草地が引きむしられると、いくつもの巣穴が地面に露出していた。キツネは姿を消した。再び姿を見るようになったのはこの前の冬だった。キツネの走る姿は美しい。前脚後ろ脚を前後に一直線に伸ばし、太い尾を後ろ脚に沿わせ、黒い一本の線となる。
今日もまたそのCDを聴いた。何度聴いてもエーリッヒ・クンツのバリトンとウィーン国民歌劇場管弦楽団と合唱団による、心にしみる「ドイツ学生の歌」,そのなかに「小鳥の婚礼」という歌がある。ドイツ語の歌詞の日本語訳は次のとおり。歌詞は1530年にさかのぼるという。
一羽の小鳥が、緑の森で
結婚式をあげようと思った。
ツグミが花婿で、
クロウタドリが花嫁、
ヒバリが花嫁を教会へ連れてきた。
ガチョウとカモは楽隊屋さん。
クジャクはきれいなしっぽのおかげで、
最初に花嫁とダンスをした。
花嫁の母親はフクロウで、
大声で泣いてお別れをした。
ウソドリが新郎新婦を部屋に連れていった。
フクロウが部屋の窓を閉めた。
コウモリが、花嫁の靴下をぬがせた。
クラッツェフス夫人が、
みんなにお開きのキスをした。
メンドリが鳴いた、「おやすみなさい」
そうして部屋の戸が閉められた。
「クラッツェフス」というのは鳥ではなく、ニワトリなどが地面をひっかく動作から、片脚を後ろに引いてうやうやしくお辞儀をすることであると。
ドイツは森の国、多様な生物が生息する。シュバルツバルト(黒い森)やハルツ山地にはオオヤマネコも棲む。十九世紀末に姿を消した野生のヨーロッパオオカミも戻ってきている。