扇町サロン

 なんとも虫は不思議、奇跡だなあと思う。
 第二回「扇町サロン」を一昨日、公民館で開催した。第一回が「人間のの眼で観た安曇野の景観」だったから、今回は、「虫の眼で観た安曇野の自然」がテーマ。市役所の昆虫の研究家・那須野雅好さんに昆虫の写真をスライドで映してもらい、虫の不思議を語ってもらった。
 「扇町サロン」という住民の交流の場は、昨年つくった。テーマを決めてみんなで団欒するカフェ、公民館が会場。住民各戸に知らせる術をもたないから、世話人が知人に開催を知らせるチラシを個別に配ってきた。今は農繁期で、田植えがやっと終わりかけているが、果樹がまだ忙しい。
「リンゴの摘果だで。参加できないね。残念。」
「孫の運動会でね、千葉まで行かなけりゃ。」
「夫婦とも体調が悪くてね。もう近づいてきたよ。」
 イワちゃん、そんな心細いことを言うなよ、私が気を入れて元気にしてあげる、なんて言いながら気を送る格好をした。
「ちょうどこれから軽トラで旅に出るからダメですねえ。大山にも登ってくるかな。」
 修さんは、軽トラックの荷台に木を使って自作の箱型のキャビンを取りつけていた。それをキャンピングカーにして山陰地方を旅すると言う。
 いろいろ会話をしながら人集めをした。
 開催すると集まった人は16人。住民のすべてには知らせることができないのが悩みの種だ。
 チラシには、こう書いた。
 「扇町サロンは、コーヒーを飲みながら、楽しく語らう集まりです。
人は交流すると元気になり、アイデアが出てきて、地域文化が生まれます。毎回、テーマがあります。関心のある人は誰でも参加できます。
 オオルリシジミというチョウを知っていますか。安曇野の草原種のチョウですが、このごろ見かけることがありません。なぜいなくなったのでしょうか。
 子どもの頃に見たあの生物が見られなくなった。それは何ですか? 何故いなくなったのでしょうか? 地球環境に何が起きているのでしょう。
 ミツバチは増えていると思いますか、減っていると思いますか。ミツバチが減少すればどういうことになるでしょうか。」

 虫の不思議な映像はおもしろかった。擬態の不思議。翅に眼玉の模様を付けたチョウ、どう見ても木の一部にしか見えない幼虫、それにまつわるお話が興味を引いた。
 参加者の一人、武則さんはニホンミツバチを飼っている。その話もひきつけるものがあった。ミツバチが激減している。残留農薬が徐々に虫たちの世界を破壊している、と武則さんは強調した。神社の森の赤松が全滅した、それでその跡にコナラやクヌギを植えて、子どもたちが虫取りできる森をつくる、という武則さんに、心の中で喝采を送った。