五頭連峰で遭難したとみられる、新潟市の渋谷さん(父)と小学1年の長男・空くん。2人は5月6日の朝、「下山する」と家族に電話した後、連絡が取れなくなっている。大規模な捜索が行なわれているが、一週間になるが発見できない。父と子の山がこんなことになって、なんとも胸がいたむ。
五頭山は千メートルほどの標高、高山ではないが、道なき道に迷いこめば、危険な山になる。
お父さんに、山の知識と技術があったら、難を逃れることができたであろうにと、思うところがある。
<迷わないための、迷った場合の、十箇条>
1、登山者の少ない山は道の整備ができていない。道を見失いやすく、下山に迷いやすい。
2、登りに歩いた道を下る場合、同じ道でも、同じ道とは思えない道になる。同じ道も、異なる道になる。
3、登りの時に見る景色と、下りの時に見る景色は、まったく異なる。あれ、こんなところがあったかなと思える景色だ。
4、登りの時に観察眼をよく働かすこと。道の両側、林の状況、谷の眺め、見覚えのある樹や石などをよく見ておく。下る時にその記憶が役に立つ。
5、道を間違えて、けもの道に入ったり、過去のソマ道に踏み込んだり、ブッシュのなかに入り込んだりしたら、すぐに引き返せ。時間がかかるようだけど、引き返す勇気を持て。
6、登山道の下の方は、沢づたいの道が多い。上に行くにつれ、尾根道になっていくことが多い。山の上部の道は尾根の上にある。引き返して尾根をめざせ。かならず道に出会う。
7、道を見失うと、精神的にあせる。あせると、なんとか下山しようとして、ますます下へ下へと降りて行き、正式ルートから遠ざかってしまう。そうなると、引き返して元に戻る気持ちを失ってしまう。それが落とし穴になる。
8、迷ったまま下へ下へと樹林の中を降りて行くと、沢に近づき、下が絶壁になったり、滝になったりして、身動きが取れなくなる。転落の危険も出てくる。
9、日帰り登山の計画だと、夕方まで帰らなくてはならないという気持ちがあるから、考えの余裕がなくなる。鉄則「迷ったら、引き返せ」を知っていても、たぶん下に降りられるだろうと、ますますピンチに陥ってしまう。
10、懐中電灯を持ってきたか、非常食を持っているか、雨具と防寒具、これらは日帰りでも必携。山のなかで日が暮れたら闇夜だ。闇の深さは後ろの子どもの姿も見えなくなる。日が暮れたら動くな。