真昼のジャガイモ掘り、
備中鍬を振り下ろして、ぐいと手前に引き寄せる。
イモはごろごろ飛び出してくる。
拳ほどの大きさのものからピンポン球ほどのものまで、
新ジャガは色も新しい黄白色の肌色。
備中鍬がイモを傷つけないように掘り方を考え、
右の畝間から左に向けて鍬を入れ、
土を深くすくい取るように手前に引く。
次に左の畝間から右に向けて鍬を入れる。
土の中から大概のイモは姿を現す。
飛び出したイモは、隣の畝にぽいと投げる。
ごろごろ転がるイモは日に乾く。
汗がふき出し、額から目に入り、目にしみる。
一瞬前が見えなくなった。
土で汚れた手袋のまま、めがねをはずすと、めがねが土で汚れた。
ポケットからタオルのハンカチを出して、目の周りをふく。
この新ジャガをあの二人に送ってやろう、ふかしてバターを塗って食べるとおいしいぞ、と書いてやろう。
汗を吸ったシャツが体にくっつく。
腰をのばして周りを見る。
熱射の真昼、どこにも誰の姿もない。
午前中で6分の1を掘り起こし、午後でさらに6分の1を掘り起こした。
日に照らされて乾いたイモを肥料の空き袋に入れていく。
袋に3分の1入れれば、運ぶのもよっこらさ、ずっしり重い。
「よくできていたかね」
おばさんが、ニコニコ顔でクルミの木の横をやってきた。
「はい、こんなに入っていました」
袋の中から二個、手に触れたのを出して見せた。
「いいね、いい。いいのが入っていたね。OK、OK」
おばさんの合格証書だ。
おばさん、ぼくより年上だと思っていたが、ひょっとすると年下かもしれない。
時計を持たないぼく、夕方は時間感覚があいまいになる。
太陽が出ていれば、その位置から時間を判断するが、雲の多い日は、遠くの町のチャイムが時間知らせになる。
だが、今日は何も聞こえない。
隣の畑のIさんが仕事を終えてやってきた。
ということは、時刻は6時を回っている。
「カブ、どうですか」
Iさん、言うなりカブを引っこぬいて6株もってきた。
お礼を言うと、
「もらってくれて、ありがたいです」
この言葉を聴くとうれしくなる。
ジャガイモはまだ畑に3分の2、残っている。
まずあの二人に送ろう、ダンボール箱を準備して。
朝ごはんは、トウモロコシに、ふかしジャガイモ、
新ジャガはバターを塗って食べるのがおいしい。
牛乳、コーヒーがぴったり合う。