小高さんの大空小学校訪問記

 「安曇野地球宿」の和室二間に大きく輪になり、呼びかけ人の小高さんが進行を行って「教育」をテーマにフリー討議を何回かやってきた。集まってきた2、30人は普通の市民、子育て真っ最中の父ちゃん、かあちゃんも多い。小高さんが、このミーティングを続けるのは、わが子のこともあって、今の学校でいいのか、ほんとうに子どもにとって望ましい教育とはどういうものなのか、という問題意識に突き動かされるからだ。
 その小高さんが、大阪市内の大空小学校を参観してきた。大空小学校の様子がTVドキュメンタリー番組で放送されたのは昨年だった。登場する子どもたち、先生の子どもに発する言葉など、ぼくは一種の懐かしさを感じながら見た。半世紀前、大空小学校の隣の地区に赴任した28歳のぼくは、被差別部落を校区にする中学校で、13年間教員を勤めた。一種の懐かしさを感じたのは、なんというのだろう、よそよそしさとは逆の、大阪庶民の風土に根ざした人と人の間柄、距離感のない言葉づかいや振る舞いが、見ているぼくの心に親しい粘り気を持って張り付いてきたからだった。教師たちは、一人ひとりの子どもの心にくっつくように接し、子どもの心に届くように語りかけている。それもまた懐かしかった。
 小高さんは、その大空小学校へ、この眼で見るのだと、現地へ行って感じてきた。そしてその感想を次のようにつづって、メールに流してくれた。

 <先週月曜日(16日)に親子で久しぶりの旅行、大阪住吉区にある大空小学校を訪問。
 大空小学校、ご存知の人もいるでしょうか? ドキュメンタリー映画にもなっている小学校で、この小学校の存在を知った時に、必ず訪れないといけない学校だと直感的に思い、朝から訪問して、学校や先生、子どもたちを直に見て、話を聴いて、肌でその雰囲気を感じてきました。
 なぜ大空小学校を訪問するのか?
 今の自分の夢、やりたいことは、子どもたちが輝ける場所をひとつでも多くつくっていくこと。そのために考えられること、やれることは何でもやっていこうと決めています。
 そして、その夢に向けての一つのゴールが、安曇野に新しい公立の小学校を作ることです。今回の訪問もその実現に向けての一歩になります。もっともっと子どもたちにとって多様な学び場があっていい、公の場でそれをつくっていく、その思いが今強くあります。
 公立の学校を作ること、そんな簡単なことじゃないのは百も承知していますし、出来るかどうか確信が持てないですが、大きなチャレンジ、やってやろうという気持ちは整いました。覚悟が定まったというか。 そして、そういう気持ちが高まってくると、その実現に向けて少なからず政治や行政のやってることに関心を持つことにもなってきました。
 今回の訪問で自分が体験したこと、感じたこと、考えたことをそのままお伝えします。
★1つ目のハイライト
・子どもたちがそれぞれ輝いている。子どもたちが分け隔てなく学校という同じ空間で生きている。助け合っている。
 子どもたちと先生の間に壁がない。子どもたちが主役、先生は脇役、そして地域の大人がサポーターとしてしっかり位置付けられている。外部から来た人も、お客様ではなく、一緒に学校をつくるサポーターとして考えている。そういう雰囲気がある。子どもたちにも伝えている。初めてという感じがしなかった。子どもたちの居場所としての学校になっている。
★2つ目のハイライト
・子どもも先生も大人も混じってみんなでひとつのテーマについて考える「全校道徳」の授業がある。今回のテーマは「なぜ学校はあるのだろう」
 先生と子どもたちの関係が近い。職員室が子どもと先生が交流する場にもなっている。校長先生が、うちは職員室ではないですから、と言っていた。その通り、職員室に子どもが自由に出入りしていた。校長先生がとにかく元気。
★3つ目のハイライト
・子どもたちから、「大空小学校みたいな学校がもっと増えていってくれたらいい」、「先生は大切な存在」という声が聞けた。
 「全校道徳」の授業を通して、子どもたちが自由に意見を出している。子どもたち(6年生)が学校内を自分で案内する「大空Navi」という授業がある。6年生がリーダーとして、後輩たちに思いや意識を繋いでいっている。
★4つ目のハイライト
・校長先生の意識が学校を創っている。意識のトップダウンは大切。
 チャイムが鳴っていたのが聞こえないくらい、子どもたちの声、動きが活発にあった。チャイムがそもそも鳴ってなかった? 子どもの人数は1クラス20名〜30名。1学年2クラス。来年度1年生の人数が倍になるとのこと。人数が増えても変わらないか?

 4つのハイライトを持って帰ってこれただけでも今回はとても意義のある訪問になりました。快く受入れてくれた大空小学校の先生のみなさん、元気に受入れてくれた子どもたちに感謝です。
 5つ目のハイライト。愛知県長久手市の市長、教育長さんが来ていました。「誰かからの報告ではなく、自分の目で見て、耳で聞いて、現場を体感したい、だから来ました」ということを話していました。一度長久手市を訪れてみたいな、そう思える市長さんでした。
 安曇野に新しく学校をつくるとして、どんな学校がいいか? それをみんなで考えるベースに今回の訪問がなると感じています。
 6年生が卒業して、5年生がリーダーとして新しい年度がスタートする2015年度に再度訪問したい、そう考えています。またきっと何か感じること、気付くことあるはずなので。
 一緒に学校づくりやっていきませんか。みんながワクワクするような学校づくりをしましょう!  小高直樹>

 「愛知県長久手市の市長、教育長さんが来ていた」と。こういう首長がいるのだ。市長、教育長が先進的な実践に学んでいる、すばらしい。現場に出てくることは皆無、現場から学ぶことをしない、そういうトップからは未来ビジョンは生まれない。