[チロルの旅] ザルツブルグの朝市

 

 教会の建物の周りに、朝市が立つと聞いて行ってみた。ザルツブルグの街の中央辺りにサンクト・アンドレー教会がある。その前がミラベル広場、そこに周辺の農家の人たちが集まってきて、青空市場がたくさんの出店によってにぎわう。毎週木曜日。

 宿から歩いて市場に着くと、すでに軒を並べる店は思い思いの形態で作物を売っていた。チーズの店は、大きな塊のまま、あるいは切ったもの、多種類が並んでいて、客が買っている。ハム、ソーセージ、スモークを売る店、果物の店には山のような干しアンズ、イチゴに、ベリー類が屋台に積まれている。日本の青空市場に共通する店の出し方から、車で牽引されてきたトレーラーが完全な店になっているのもある。

 野菜、肉、蜂蜜、花、かばん、毛糸で編まれたセーター、帽子、大きな店、小さな店、何が現れるか興味津々、見ていて飽きない。勉強机くらいの小さな台にジャガイモを積み上げて売っている若者がいた。たくさん売れたらいいなと思う。

 何を売るか、どんな店を出すか、それは自由、我が家の生産物を売って、いくらかの収入を得よう、この自由な姿がなんとも好ましい。教会をぐるりと一周二周に取り囲んで店はにぎわう。こっちのおじさんの果物が、あっちのおじさんの果物よりよく売れているなあ、と値段を見比べてみたりする。
 ぼくはこういう朝市が好きだ。その日、そこに来て、作物をつくった人の顔を見、会話を交わしながら買う楽しさ。労働がにじみ出た商品だ。

 日本の朝市では、高知城の朝市がよかった。高知の特産品・名産品、高知の美味しい食材はほとんどここで手に入れることができる。飛騨の高山の朝市へは何回も行った。ここもなんでもあり、の朝市だった。乾燥させたサルの頭蓋を置く漢方の店もあった。
 安曇野でやれないかなと、ぼくがある場所に画いている朝市がある。自由に自分のつくったものを売る朝市、農産物、手づくり工芸品、加工品、衣服、なんでもいい。朝市がにぎわうようになれば地域の活性化はまちがいなし。

地域の人との交流のうえに他の地から来た人と交流する、さらに出店という行為は自分を開放することでもある。安曇野にやってくる人は増え、閉鎖的で沈滞した精神性が開かれるだろう。この計画に賛同する人はきっといる。その人が出てくるのを待っているだけではことが進まないから、積極的に打って出ようかとも思う。
ザルツブルグの朝市、チロル帽の店もよかった。