突抜き忍冬

<ウォーキングで見たチューリップ畑>



 「今年は花が多いと、何人もの人が言うよ」
 太極拳の会に毎週行く家内がそんなことを聞いてきた。そう言えば確かに花の数が多い。スイセンチュウリップなど草本系だけでなく、木々の花数も多い。ライラックが華麗なる満開。3メートルを越す木は、赤紫の花で覆われている。アメリハナミズキも見事に咲き誇り、白い大きな風船のようだ。梅もすごかった。今日気がついたのは、山吹の花の多さだ。山吹ははびこりすぎるから、これまでできるだけ繁茂をおさえてきた。それにもかかわらず、今年は少しの枝にもたくさん花をつけている。
 花をたくさんつけるということは、種族を残そうとするからだ。だとすると、種族を残そうと行為化するには理由があるはずだ。去年の夏の暑さと地中の水分の関係、今年の冬の寒さ、何か原因があるのではないか。
 家内がめずらしい花を買ってきた。鉢に植えてあり、わっかのある支柱が植木鉢に差し込まれている。つる性の花だと分かる。ピンクの花が3っつついていた。花の名前を聞いたが、これまで聞いたことのない名前だった。これを地植えしてほしい、と言う。植木鉢より地植えのほうがよく育つらしい。
 「これをバラのアーチと一緒に植えるといいらしいよ。この花はスイカズラの仲間で、つるを伸ばすから」
 家内のこの言葉で、植える場所が決まった。この春にもらってきた廃材の柱を使ってつくったバラの門柱には、モッコウバラと白のつるバラがすでに門柱の上までつるを伸ばしている。この門柱の反対側の柱には、添わせるバラを植えていなかった。そこへこれを植えれば、一方から黄色いモッコウバラと白のつるバラが、もう一方からは、このピンクのスイカズラの仲間が這い上がって、りっぱなアーチを作ってくれる。
インターネットで調べてみたら、生長早く、花期長く、耐寒性と耐暑性はやや強い、世話もあまりいらず病虫害に強いとある。
 ネットで調べたときは、その名で検索したが、聞いたことのない名前だったことから、すぐ記憶があいまいになってしまった。翌日になると名前が出てこない。なんとなく名前の感じをおぼえているから、そのフィーリングが口をついて、
 「あの花、テンジクニンジンだったかな、あれ」
 なんて、口から出まかせ。
 家内はげらげら笑う。
 「ツキヌキニンドウ」
 あそうそう「突抜き忍冬」、
 「テンジクニンジン(天竺人参)だなんて、よくまあ器用に口から出まかせ」
 でもなんとなく似ている。
 突抜きというのは、葉が対生し,花のすぐ下の 2 枚の葉は合体して 1 枚のようになり,茎が葉を突き抜いているように見えることから、この名前になった。「忍冬」というのはスイカズラのことだ。
 門柱の横に植え穴を掘って、そこにあった石を取り除き、腐葉土のたっぷり入った黒土を投入して、ツキヌキニンドウを植えた。3輪の花は、これから花の数が増えればどんな感じになるか想像させるいい花だ。少し咲く時季がずれるモッコウバラと白バラに突抜き忍冬が加われば、どんなコラボレーションができるか、楽しみになった。
 花よ、咲け。