暴風雨

 朝から風が強かった。7時半ごろ、関東地方で強い地震があったというニュースが流れた。茨城が震源地だったようで、数日前手紙を送ってくれた牛久のマルちゃん、大丈夫かな、驚いただろうな。
 8時から居住区の農業用水路の掃除だ。一戸に一人は出て、地区の担当区域の、距離にして400メートルほどの水路の異物を除去したり、水路にかぶさる草を刈ったりする。毎年恒例の行事だ。
 天候は下り坂、1時間ほどの作業が終わるころ、ぽつぽつと降ってきた。やはり予報どおり、強風雨になった。風は東南からの風、雨は南側のガラス戸のいちばん上まで吹きつける。昨日作った干し柿を守る雨よけは風にあおられて、下部を固定しておいた紐が切断し、ばたんばたん揺れ動いている。やっぱり昨日の固定の仕方は甘かった。自然の力は予想以上になる。ビニールを貼った障子は、風をまともに受けると、猛烈な圧力に抗しなければならない。穏やかな日に風を予想して作業しても、実際に風雨が荒れ出すと、予想をはるかに超えてしまう。強風の日に凧揚げをすると、あの小さな凧でも、風の圧力にもみくちゃになり、上がっている凧の紐にかかる力が大きいことを経験してはいることだが。
 防風障子の下部をベランダの手すりにくくりつけた紐は風圧で引きちぎられ、吊り下げられた障子は吹き飛びそうだ。すぐさま障子の固定に取り掛かる。雨が横なぐりに降る。昨日固定に使った麻紐はやはり弱かった。これじゃだめだ。自転車の古チューブでぎゅっと伸ばして縛ればいいのじゃないか。古チューブを納屋から取ってきてはさみで縦に切断し、それをつないで長くて太い1本のゴムひもにした。これを使って縛ってみた。しかしそれでもゴムを伸ばすように風圧がかかる。よし、竹ざおを使おう。工房の床下から竹ざおをとってきた。ところがこれは長すぎて柿でいっぱいのベランダに持ち込めない。走りまわって、材木の細い桟を使い、やっと固定に成功。これで落ち着いた。新聞を読もう。
 「脱原発団体にサイバー攻撃 33団体標的 253万通 一斉メール」
 トップの見出しだ。自分の正体を隠して、秘密裏に動いて自分たちが不都合だと思う考えや行動を押しつぶそうとするものたちの策動が、陰険で過激になってきた。「反原発教徒を皆殺しにしなければ世界平和はやってこない」というメールもあったという。不穏な時代になってきた。
 アメリカの歴史的な、黒人を迫害襲撃し、さらにアジア人も標的にした「KKK」、すなわち「クー・クラックス・クラン」という白人至上主義者も、覆面をして襲った。
 ナチススターリン主義者のように、国家の強力な権力者をバックにした動きと、宗教や宗教指導者をバックにする場合と、ヘイトスピーチのような、思想に流された民衆の中の無知偏見とエゴから来る動きと、時代と社会によっていろいろな原因はあろうが、人間による狂った嵐はその時代の情況のなかから生産され尽きることがない。台風に目があるように、人間の狂った嵐にも目があり、核になる人物がおり扇動者がいる。そういう動きは絶えなくても、それをはねのけ、それに支配されない、民の知性と力を養わねばならないと思う。