干し柿を雨から守る


 干し柿を南向きのベランダの物干し竿に吊るした。干し柿を吊るしたその上には軒がある。
 雨風になると、柿は吹き込む雨にさらされる。雨に濡れた柿は、時にカビが生えることもある。
 吊るした翌日雨が来た。急いでポリ袋の大きなのを切り開いて柿の上から下に垂らし、雨除けにした。でも完全に横殴りの雨を防ぐのは難しい。
 この地は風の通り道。雨はいつも風を伴う。特に多いのが南風。南向きのベランダに南風が吹きつける。風雨が止んだら、またポリを取り除いて、吊るし柿に日を当てる。
 もっといい方法がないかなと、考えていたら名案が浮かんだ。イワオさんからいただいた、廃棄処分になったたくさんの木の明障子(あかりしょうじ)、それが活用できそうだ。四角い木枠の中に木の桟が碁盤の目のように組まれている。障子紙ははがした。
 その障子の木枠に厚手のビニール布をはって軒から吊り下げて上下を固定できるようにすれば、完全な雨除けになる。この厚いビニール布もこの夏使った、トマトの覆い。アーチの支柱を立てて、トマトの株を覆うビニールの屋根にした、このビニール布も、何度もの強風に吹かれて引きちぎられ、廃棄処分にしたものだ。
 明日は雨になるようだ。それも強風を伴いそうだ。やることはいっぱいあるけれど、この仕事を優先しよう、今から作ろう。
 寸法を測れば、障子を3枚使うことになる。家のあちこちから材料を集めた。今日は穏やかな日差し、背中が冷えるのでチョッキを着たら少し温かくて心地よい。
 まず軒に横桟を取り付けて、そこに吊り下げられるように金属の引っ掛け金具になるものを探した。道具箱のなかにちょうどいいものがあった。
 金具を取り付け、ビニールを貼り付け、ベランダの柿すだれの前面にもっていって、軒からぶらさげた。ぴったし、透明なビニール布は、明りを取り入れ、3枚の障子は干し柿を雨から守るついたてとなった。
 この干し柿の柿には種がある。柿の粒は小さいが300個はある。味は甘く、この冬も、毎日干し柿が楽しめる。息子家族や友人たち、雪嶺を眺めながら、天からの甘露に酔わんかな。
 「一日一個のリンゴは医者いらず」と、我が家の縁側でジャマイカのジミーが言った。あれは、奈良の御所でのことだった。
 「一日一個のリンゴと、数個の干し柿は、人生の楽園」、安曇野に来て感じいったことだった。