柿

 今年は、あちこちの柿の木にあまり実がついていない。不作だ。一昨年は豊作でたくさんいただいたイワオさんの家の柿の木も、昨年に続いてまったく実が成っていない。樹種は「平種無し」で、この樹種はこの辺りどこも実がついていないのではないか。花が咲き、授粉する時に、今年は霜が降りたからだ、と聞いた。
 ああ、今年は干し柿が作れないかなあ、と思っていたら、あや子さんから、「柿をあげます」と声がかかって、ひやあ、うれしいと、家までいただきに行った。去年に続き、今年もあや子さんの家の柿がいただける。ほかの柿はだめなのに、あや子さんの家の柿はたくさんの実をつけた。種類が違うからだろう。
 あや子さんの家のガレージに、柿はすでに収穫されて置かれていた。箱と袋に入れてある。先のとがったチョッポ柿だ。昨年もいただいたときは、ぼくが樹にのぼってハサミで小枝ごと実を切り取った。干し柿にする柿は、へたに付いている小枝をT字形に残して切り取る。そうすると紐に吊るす時、実のT字になった小枝を紐の撚り合わせ部分に挟み込むことができる。
 今年いただいた柿は、T字の小枝を残して1個ずつ切り取られたのと、長い枝に何個も実をつけているのとがある。
 お隣のOさんの分も一緒にいただいて帰った。我が家がいただいたのは、200個以上はある。
 早速、家内と一緒に柿の皮むきをした。皮むき器を使って、皮をむく。これもむき方でスピードがまったく違う。20個ほどむいてから、これは遅すぎるとやり方を変えたら、すいすいむけるようになった。まずヘタの周りを円くぐるりとむいて、つづいてむいたところから先端のほうへ、縦にひっかくようにむいていく。
 皮をむいた柿を、一本の紐に8個ずつはさんで、2階のベランダの物干し竿にぶらさげた。かくして柿すだれの出現だ。
 昼過ぎ、Oさんから電話があり、さらに数十個の追加をいただいて帰った。今年の冬も、帰ってくる息子たちの家族みんなで、甘くておいしい干し柿が食べられる。
 夕方、林業家から木のチップを大量にもらってきた。これを今年10本植えたブルーベリーの周りとバラの根方に敷いた。チップ置き場で、スコップでチップをすくっていると、カブトムシの幼虫が何匹も出て来た。さすがにカブトムシの幼虫はごろりと大きい。チップの山の中に潜んでいたのが、スコップに掘られて安眠を妨げられた。申し訳ない。位置を変えてチップの中にもう一度埋めもどしてやった。
 堆肥の空き袋20ほどに入れて持ち帰ったチップは、ブルーベリー、バラ、ヤマボウシの根方に敷いてやった。酸性土壌の好きなブルーベリーは、木のチップを好む。
 この秋最期のアカトンボが飛んでいる。朝は霜が降りていた。かろうじて昼間の暖かさで生き延びているかそけき命。明日から気温がさらに下がるようだ。アカトンボもチョウも、残りの命がわずかになった。