*[暮らし] 柿の実、ナツメの実
1本の彼岸花
三年ほど前に苗を植えた一本の富有柿が、今年10個ほど実を付け、そのうち落果しないで生き残った青い柿は5個ある。
人間の背丈ほどに柿の木は育ち、その枝に5個の実。
実はつややかな緑の葉っぱと同じ色をし、枝葉のなかから見分けるには少し時間がかかる。ときどき実の数を数えて、あれ4個しかないよ、落ちたのかなと、体の位置を変えては数えなおして、ああ、5個あったと、健在なのを確かめると安心する。来年はもっとたくさんの実を付けてくれるだろうな、20個くらいできるかなと、楽しみになる。
岐阜の日中技能者交流センター研修所で一緒だった、美濃柿をつくっている杉原先生から、甘柿は信州まで行くと渋が濃くなりますよ、というアドバイスを聞いたときは、すでにその富有柿の苗を植えた後だった。甘柿よりも渋柿のほうがいいという知恵をもっと早くから知っていたらよかったな。
渋柿で干し柿を作るのが最高だと思うようになったのは、ご近所の厳さんからどっさり干し柿用の渋柿をもらってからだった。木に上ってもいできたたくさんの渋柿を、くるくる包丁で皮をむき、ひもでくくって、竹竿に吊るし、軒下に干す。干してから後に、その干した柿をもんでやるとよい、とご近所の良子さんから聞いて、去年は洋子が指でもんだ。氷点下の寒天に干された柿は白く粉を吹き、糖度を高め、正月のおいしいおやつになった。こんなにおいしい柿は今まで食べたことがないと思うほどだった。
村のコーラス会で、厳さんが、
「今年柿がだめになってしまった。」
と言った。夏の時は、今年は大豊作で、吉田さんに木一本分あげるよ、と言ってくれていたのが、秋になって実が落ちてしまったという。
残念、今年は干し柿がつくれない。
お店の園芸コーナーで、わずか30センチほどの小さな、売れ残って弱りきっていた貧弱なナツメの苗を一本、200円ほどで買ってきて植えたのが、すくすく伸びて、去年は20個ほど実を付けた。そして今年はいっそう伸びて、3メートルほどになり、実が去年の4、5倍ほどついた。
熟れるにつれて実の色は緑白色から黄色くなり、やがて褐色になって、ぽとりぽとりと落ち始める。熟れすぎて黒っぽくなった実は、しわしわになり、干しナツメのようになる。
黄茶の色の、しわのよっていないのを一個、食べてみたら、りんごの味を思わせた。おう、これはいける。
すでに地面にはたくさんの実が落ちている。
「ナツメのお粥が作れるよ。」
と、洋子に言って、急いで収穫に取り掛かった。竹のザルにとれた実は、南の日当たりのいい軒先に干した。
生のままでもいけると、デザートにもだして食べたが、ナツメのお粥はまだつくっていない。
今ごろ、中国山西省、黄土高原のナツメはたくさん稔っているだろうか。中国ではレストランでも、家庭でも、ナツメや他の木の実を入れたお粥がつくられる。喉が痛いときのお粥、熱が出たときのお粥、咳が出るときのお粥、いろんな効能をもったお粥があった。食事と健康とが結びついていた。
今年、ブラックベリーはさっぱりだめだった。去年は一年間食べるだけのジャムが作れたが今年は桑の実ジャムだけになった。天候不順も、虫も影響している。
去年植えて初めて稔ったラズベリーはほんの少しできただけ、枝だけはにょきにょき伸ばしている。
5年になるのに、木は大きく育ってはいるがいっこうに実を付けないのがスモモ。違う種類を二本植えてあるが、どうも花期の授粉のすれ違いがあるようで、他のところから花粉を少しもらってきて満開のときに授粉してみたが、それが効果あったのかどうか分からないが、たった2個だけ実がなり、それに気づいたのは、実が熟れて落ちていたからだった。
スモモよりも渋柿にしておけばよかったと思ったりする。
株が増えて増えて、たっぷりとれたのはミョウガ。昨日から甘酢漬けにして食べている。