もし、ぼくが今、現役の学級担任だったら、朝の教室で生徒たちにこう言う。
「巨人と楽天の試合見た人、手を上げてー」
ハーイ、
「巨人、応援している人は?」
ハーイ、
「楽天、応援している人」
ハーイ。
「どう思った?」
みんなに聴いてみる。
ぼくも、試合の中継を見たよ。
土曜日の第一試合、2対0、巨人がリードしている。8回裏、楽天の攻撃、ランナーが二人出た。松井が打席に立った。打ったー、球はぐんぐん伸びている。入るぞ、入るぞ、逆転だあ、と思った瞬間、外野手はスタンドの間際でジャンプ、取ったか、入ったか、球は野手のグローブに入っていた。ものすごいプレイだった。
9回、楽天最後の攻撃もランナーを出しながら、決定打が出ず、楽天は負けた。
日曜日の試合、日本語教室から帰ってきて中継を見た。楽天はマー君が投手、すごい勝負だった。楽天が勝った。
改めて野球というスポーツのすごさを感じたね。二人ランナーが出ていても、後のバッターにヒットが出なかったら、残塁になる。攻撃の連続性がないと、点を取ることができない。
投手と打者、そして捕手、3者の勝負を見ていると、必死の人間が現れている。見るものも緊張する。そこが野球の妙だ。
3割打者は強打者だ。それでも10回のうちに安打が3本しか打てないということだ。ヒットを打つということは難しい技なのだ。スポーツの試合では、成功と失敗に大きな差がある。圧倒的にうまくいかなかったことのほうが多い。「ああ、だめだった」の積み重ねなのだ。第一試合、「楽天」は「落胆」だった。
東北の大震災被災者にとって、楽天がひとつの希望となっている。勇気をもたらす存在になっている。挫折のなかの希望、それを楽天の試合に東北の人たちは見ている。
クラスのみんなで感想を出しあってから、ぼくは質問する。
「野球って、なんで9回までなんだろうね。延長戦に入ると10回11回となるけれど」
子どもたちは考える。そんなこと、そうなっているからとしか思っていなかったよー。そう、当たり前にしていると、なぜ?と考えないからね。どうしてこうなってるんだろうと、自分の頭で考えることが大切なんだよ。教えてもらうよりも発見する、体験する、自分でやってみる、それがいちばん大事なんだよ。みんなで考えろー。
選手の数は9人だねえ。数が同じだよ。それ、関係がありそうだよ。
打者は、3人がアウトになったら、攻撃は終わりだね。そうすると3回で9人全部に打順が回ってくるよ。
うん、分かった。9人の選手が最低1度打席に立って3回が終わり、2度目で6回戦、3度目で9回戦が終わります。選手はみんな最低3回、バッターボックスに立てるんですよ。
そうかあ、打席に立てば3回ストライクをとられるとアウト、それが3回チャレンジできるんだねえ。
選手の数はどうして9人なの?
ピッチャーでしょ、キャッチャーでしょ、一塁手、二塁、‥‥数えていったら、あれ8人だよ。
ショートが抜けてるよ。
ああ、ショートかあ。
遊撃手と言うねえ。球がよく飛んでくるんだよ。
こういう会話が盛り上がるホームルーム。毎朝、日ごろの話題を話し合う。楽しい。
残念ながら今の私にはもうそういう場がない。