地域社会の目指す方向



 昨日の風は猛烈だったようで、朝ウォーキングしていると、ゴミステーションのプレハブ小屋が10メートルほど吹き飛ばされ、屋根を下にして逆立ちしていた。安曇野のあちこちで被害が出ているようだ。ビニールハウスや、農小屋が飛ばされたり、屋根を持っていかれたりもしている。瞬間最大風速が20メートルだったとニュースが伝えていた。観察すると、局部的に、瞬間風速が30メートルぐらいになったところもあるように思える。吹き倒されても不思議でないように見える廃屋が案外大丈夫だったりして、あれれ、この建物無事だったか、と意外な気持ちと安心した気持ちが入り混じる。
一昨日は最高気温20度近かったのが、今朝は雪が少し積もった。朝の6時台、野に人影なし。

 「若い人たちは物価も賃金も上がらない中で、お金を使わずに生活するノウハウを持ち始めています。たとえばシェアハウスに住む人が増えている。一軒家を5、6人で借りて住めば、洗濯機とか冷蔵庫も一台ですむし、料理もまとめてつくれば矢安上がりだ。一人暮らしでも、友人どうしで材料を持ち込み、ホームパーティのように楽しみながら安く仕上げてしまう。当初は収入が増えず防衛的にやったのでしょうが、そんな生活も悪くないと。
 社会問題の解決に取り組むソーシャルビジネスもトレンド(流行)になっています。苦戦するケースが多いが、失敗して普通の仕事に戻って、また挑戦して、という感じで、ノウハウをためている。お金ですべてを得る市場経済ではなく、何らかのコミュニティにつながり、みんなで生きる経済。助け合いながら、社会的な役割を果たせるような働き方をしようという動きが強まっています。
 私も群馬県上野村に住んでいますが、農家の知り合いが米やお茶を送ってくれます。市場を介さないコミュニティは、小さくても強い。豊かさとは不安のなさだ、とも言えます。それは貨幣を介さない仕組みをどこまで社会が持っているか、ということにかなり依存すると思います。すべての不安を貨幣で解消しようとすれば、膨大な貨幣量になってしまいます。
 多くの人が、富を貨幣で換算することに疑問を強く持ち始めています。たとえば、住宅を買うときも、価格がいくらかではなく、家族団らんの温かい雰囲気にできるかを大切にしている。貨幣で何でも手に入る経済は、生活のすべてが貨幣に支配されているような、どこか居心地の悪さがあります。」(内山節 哲学者 朝日新聞3.13)

 内山節は、群馬県上野村に住んで畑を耕しながら、東京・立教大学教授を勤めている。彼の哲学は、農民と村と土、そして都会と大学の両方に身をおいて、社会を見つめてきた哲学だ。
 安曇野も経済価値を優先して風土を貨幣に換算する意識が強い。暮らしの中に助け合いのある地域社会、本当の豊かさと美が醸し出されるのは、人と人のつながりからだろう。