薪づくりと初冠雪・初霜


ログビルダーのケイタ君が、伐採した2本のナラの樹を運んできてくれたのは、一月ほど前だった。
建築現場で切り倒された後、寝かされていたのか、樹肌に苔がついている。
工房に設置した薪ストーブの薪に持ってきてくれたのだが、二本とも直径30センチほどで、長さは4メートル以上はある。
これをストーブに入る長さに切るとしたら40センチずつで切っていくことになる。しかし、その丸太をさらに縦に割らねばならないから、斧をはっしと打ち下ろしても、節のあるのや、40センチの長さのでは、割るのも簡単ではないだろうから、長さはもっと短めに切ったほうがいいなと思案して、チェーンソーの購入を考えていた。
チェーンソーも電気を動力に使うのと、ガソリン・オイル混合の燃料を使うのと、二種類あり、持ち運ぶには混合燃料を使うものの方がいい。だが、その価格は高い。
どうしようかと考えながら、とりあえず昔ながらに型枠用の大型ののこぎりで切ることにして、垣根の道路際にケイタ君がクレーンで下ろしていったのに挑戦した。
一日に3本切れば、1ヵ月ぐらいで切断が完了する。木の硬さはどんなものかなと、夕暮れの気温の下がってきたころ、ギイコギイコと切ってみた。すると、最初の一本は20分ほどで切れた。これならいけるぞと、それから3日ほど息を弾ませて6本を切り、しばらくおいて昨日ふたたび挑戦していたら、ご近所のHさんの奥さんが通りかかられた。
「いただいたミョウガ、おいしかったです。」
と、たくさんできたのでおすそ分けした我が家のミョウガへのお礼を言われた。
「今日は北アルプス、初冠雪ですね。」
「いよいよ冬ですねえ。」
「薪ストーブ用の薪作りで、のこぎりで切ってるんですよ。なかなかです。」
「それはたいへんですねえ。実家から借りているチェンソーがあるからもってきましょう。」
奥さんは鮮やかに赤い小型のチェーンソーを持ってきてくださった。
「いやあ、これはありがたいです。ぼくはまだ使ったことがないので、使い方を研究しなければ。」
と言うと、
「もうすぐ息子が帰ってくるので、息子は仕事で使っていますから。」
とのこと。
しばらくのこぎりで切っていた。
そこへ仕事から帰ってこられた息子さんが来て、20代らしいフレッシュな動きで、たちまち二本のナラの樹を35センチ間隔で短く切断してしまった。1時間もかからない。
「一月かけて切ろうと思っていたのが、いやあ、こりゃあ速かったあ。さすがですねえ。ありがたいことです。」
「のこぎりでは、たいへんですよ。」
息子さんは、さわやかな笑顔を残して帰っていかれた。


鹿島槍から白馬にかけて、連峰は白く輝いている。
夜、天気予報が、明日は霜が降りると言っている。
外に出していた鉢物は部屋に取り込んだ。


今朝、予報どおり、霜の朝だった。くっきりと全山晴れ。
ランとの散歩は、手袋が欲しいくらいだった。


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