炭素循環農法の威力


    ブラックベリーの実もたわわ

    ゴーヤの緑のカーテン
 

去年のジャガイモの小さいのが収穫時に土中に取り残されていた。
それから勝手に生えてきた株がよく茂って、50坪ほどの小さな畑の畦間(うねま)や畦のきわなど、あちこちでジャガイモの存在を誇示している。
ところがまあ、休耕田の一部を貸してもらって種芋から育てたジャガイモはさっぱり勢いがない。
勝手に出てきたジャガイモの株を何本かを掘ってみたら、大きな芋がごろごろ出てきた。
しーろい、でっかい、ジャーガイモ。


春に、キノコの栽培をしている会社の農場から栽培済みの菌床(産業廃棄物)を4トン持ってきてもらって畑に入れ、
その上に近くの林業会社の製材チップ(産業廃棄物)をもらってきて載せた畑の作物は、生育が目覚しかった。
菌床はトウモロコシの粉が原料、それをただ畦の土上に置いただけなのだが、作物の育ちはことのほか著しい。
キノコの菌床栽培は、たとえばシイタケ栽培の原木はクヌギだが、原木に限りがあるから、代用品として菌床が使われるようになったもので、
原木の代用品トウモロコシを固めた菌床にキノコ菌を植え付けて、キノコを栽培する。
ぼくの初めての体験、使用済みのリサイクル菌床の効果は見事だった。
雑誌「現代農業」に載せた記事を持って城さんが来て話してくれた、炭素循環理論のとおりだった。
窒素、燐酸、カリの肥料設計よりも炭素を重視するやり方だ。
城さんの言うとおりに、ぼくは畦の上に菌床とチップを布団のようにたっぷりかぶせた。
4トンもあったから、もうほんとうにたっぷりだった。
木のチップは、林業会社の材木置き場にあるチップをもらって、袋につめ、車で何回も運んで、菌床の上にかぶせた。
菌床とチップ、多いところでは厚さが10センチ近くあった。


その効果たるや、勝手に生えてきたジャガイモはもちろんのこと、
畑に捨てた生ごみの中のカボチャの種から出た芽は、ぐんぐん広がり、あまりに面積をとりそうだったから、支柱を立てて立体的に蔓が伸びるようにした。
そうしたら、今もう5個の大きな実が支柱の上に成っている。
葉はハスの葉ぐらいもある。
ヤーコンの葉も、ナスの葉もどでかい。
トマトの茎はがっしりと太く、1本の木に20個近くの実をつけている。
キュウリも濃い緑の葉を茂らせて、毎日のように何本もの実を提供してくれている。
今日は児童館指導員の仕事に弁当とキュウリを持っていき、梅味噌をつけて、きゅうり2本を丸かじりした。
みずみずしいキュウリの丸かじりは、熱中症にも効果があると確信した。
屋外で昼間仕事をしている人は、キュウリを丸かじりしなさい。
体温を下げ、水分とビタミンを補給し、熱中症を防ぐことまちがいない。
ゴーヤの生長にも驚嘆する。
緑のカーテンに育てたゴーヤは、トップランナーの先端が屋根にとどき、
朝早くから、蜜蜂か花アブの羽音がする。
実を数えてみたら10個ほどある。
すでにゴーヤチャンプルにして食べた。
菌床と木のチップを利用した炭素循環農法はすばらしい。
我が家は絶賛する。


ところが、近くの畑で栽培しているご近所のKさん、同じようにキノコ会社から菌床を持って来てもらい、それを畑にすきこんだようだ。
軽トラックを道のど真ん中で停車して、Kさんが話しかけてきた。
「菌床、どうかね。」
「いやあ、よくできますねえ。」
「それが、うちは作物が全滅しただ」
「ええ? どうして。」
「土にすきこんで苗を植えたんだがね。苗全滅した。菌床を入れたほかの人に聞いたら、1年間は畑に入れないで寝かせておかないダメだと言うだね。」
Kさんは、あれは失敗だったと、すっかり懐疑的になっておられる。
そりゃ何かまちがっているな。
両極端の結果だ。
何がどうなったのか。
すきこんだからじゃないかなあ。
そうじゃなく、生きている菌床を畑の土に載せるというのがセオリーであるはず、
それを土にすきこんでしまったのが問題を引き起こしたのではないかと、ぼくは思うのだが。
我が家では、その菌床からキノコがにょきにょき伸びてきた。
初めはエリンギだった。
それから別の種類のキノコが生えてきた。
菌床の上に木のチップを置くことで、別のキノコが生えたのだろうか。
それから、原料のトウモロコシと木のチップが分解され、その炭素が作物に吸収されていった。


菌床と木のチップ、草の猛威を抑え、水分の蒸発を防ぐ役割もしてくれている。