「人の美を成す。人の悪を成さず」



「犬のお父さん」のコマーシャルを制作した佐々木宏が、新聞で(朝日「耕論」)、
今の日本の政治家批判は、「クラスのいじめの構造に少し似ている」と書いていた。


「いまのマスコミと世論は、政治家に対してネガティブチェックだけになっている。
クラスのいじめの構造に少し似ていている。」


ダメ ダメ ダメばかりでなく、
良い点、魅力のあるところ、理解できる所、そういうところをポジティブチェックしようじゃないか、
という主張だった。
そうしないと政治家も育たない。
政治は主権者の国民が政治家に託すのだから、チェックしながら建設的な意見を提出しいくべきである。


論語の中に、「君子は人の美を成す。人の悪を成さず。小人は是れに反す。」という孔子の言葉がある。
人格の立派な人は、他人の美点長所を見つけて、これをさらに高め、成就するように助け伸ばして完成させる。そして、他人の欠点を放置したり、伸ばしたりするようなことはせず、忠告をして、悪にいたらないようにする。だが、人徳の欠如した人は、相手の良い点をつぶしにかかり、相手の悪を助長するような行動をする、という意味である。


参院選のなかで、政治家が声を張り上げて他党を批判する姿は、
まさに「小人は是に反す」と言いたいほどだった。
聞いていて、むなしさがつのる。
批判のたちの悪さ、品格のなさ。
けちをつけ、揚げ足を取り、否定し、こきおろす。
批判の先鋒を自認するメディアのなかには、
たたいて、つぶすことを目的にしているようなのもある。
情報化社会のなかでは提供される情報によって判断がなされるから、それに、世論や民の心情は影響もされる。
人はインプットされる観念を、検証する必要があることを分かってはいるのだが、
検証の手段がないとか、検証する余裕がないとかで、情報は情報として脳の中に居すわり、
それらが常識、先入観になって蓄えられる。


「人の美を成す。人の悪を成さず」