四月、千変万化


 常念岳と桜並木



昨日おとといの日中は夏日のような日射だったのに、
一晩のうちに季節は夏から冬に舞い戻り、
今朝は夜中から降りだした雪がちらちら舞っていて、
五分咲きでももう満開かと思われるような、野のあちこちにある桜樹の花にも雪が積もり、ピンクと白の綿帽子をかぶった。
今年の四月は、千変万化の天候だ。
おとといシャツ一枚でも汗の出る日中に畑の草欠きをしていたら、冬眠していたカエルが飛び出した。
まだ早いから心配だったあのカエル、この冬日にどうしただろう。
賢治は、「4月は風のかぐわしく」と歌ったが、
穏やかに晴れた日は、「梅」や「匂い菫」や「水仙」の香がただよい、コブシ咲き、野草も思い思いの花をつけて、
確かに4月は風がかぐわしい。
その風がまた気まぐれ風で、おとといは何もかも吹き飛ばすような大風だった。
イチゴの苗に追肥をやって、モミガラで土を被覆し、その上から黒マルチを敷こうと準備していたら、突如荒れ出した。
干していた洗濯物を竿から吹き上げ、
たちまちモミガラの大半が吹き飛ばされていった。
4日前の日曜日、農家のKさんから借りた休耕田のかたすみに、
強風の中でジャガイモの種芋を植え終えたその夜は雨になり、
去年収穫して食用に保存していたジャガイモに芽がにょきにょき出ているから、それらをさらに種芋に追加して植えようと、
翌日田んぼに持っていって畝作りを始めたものの、
やはり田んぼは水もちがよく、長靴がずぼずぼと田の土にはまり込んでいく。
これじゃ作業はうまくいかない。
晴れが二三日続き、土が乾くのを待つことにしたのだった。
今日、庭にツグミが二羽来て、土の中をくちばしでしきりに掘り返し、隅に野菜くずを捨てているところも掘っている。
冬鳥のツグミは、北の国から秋に渡ってきて、春に北へ帰っていく。
旅が始まる4月末に向けて、大いに食べて体力をつけておかねばならないが、
それにしては、天候不順で、餌も充分ではないようだ。
松本市新村あたりから、西方の山と山のあわい遠くに忽然と立ちあらわれる純白の峰、乗鞍岳は、青空を背にして、神々しいばかり。
北原白秋の詠った山姿だった。



      渡り鳥
           北原白秋


あの影は渡り鳥。
あの輝きは雪、
遠ければ遠いほど空は青うて、
高ければ高いほど脈立つ(なみだつ)山よ。
ああ、乗鞍岳(のりくら)、
あの影は渡り鳥。