グールモン「落葉」

michimasa19372008-12-06



来年の土を肥やすために、どんぐり林の落葉と木屑を集めてきました。
道路際の側溝を埋めている落葉を取り除くだけでも、たくさんの量になります。
庭に入れると、ほかほかの布団のようです。
落葉と木屑は、この冬の酷寒に凍てつく木々や草花の根元を守ってくれます。
落葉を敷き詰めた木々の根方は、葉を落とした木々の姿と見事に調和しました。
ところが、西からやってきた低気圧と前線が、猛烈な風をもたらし、落葉は空高く舞い上がり、
それでも大半の落葉は、しっかりと土をおおっています。


フランスの詩人であり小説家であったグールモン(1858〜1915)は、田園詩を書きました。
日本の詩人、堀口大学は、「彼ほど私に影響を与えた文人はいない」と言ったそうです。
グールモンの著作物は、パリの古本屋に行ってもなかなか見つからない、それはフランス人がグールモンの本を身辺において、永く心の糧にしようとするからだ、とも書いています。
「落葉」という詩は、シモーンという女性に呼びかける形で書かれている素朴な詩です。 
  



            落葉
                グールモン(堀口大学訳)


   シモーン、木の葉の散った森へ行こう。
   落葉は 苔(こけ)と石と小径(こみち)を被(おお)うてゐる。
  
   シモーン、お前は好きか、落葉ふむ足音を?


   落ち葉の色はやさしく、姿はさびしい、
   落葉ははかなく捨てられて、土の上にゐる!


   シモーン、お前は好きか、落葉ふむ足音を?


   夕べ、落葉のすがたはさびしい、
   風に吹き散らされると、落葉はやさしく叫ぶ!


   シモーン、お前は好きか、落葉ふむ足音を?


   よりそへ、われらもいつかは、哀れな落葉であろう。
   よりそへ、もう夜が来た、さうして風が身にしみる。


   シモーン、お前は好きか、落葉ふむ足音を?




冬の夕暮れ、太陽が西の山に沈むと、急に寒さがしんしんと身にしみてきます。
風が身にしみます。
シモーンよ、寄り添え、と呼びかけます。
私たちもいつかは哀れな落葉になる。
グールモンは「哀れ」と言っていますが、いっとき、落葉は「哀れな」存在になっているように見えても、
長い目で見れば、落葉も又めんめんと続く命のつながりをつなぐ役割をしているのです。
落葉は、やがて春になり、草木の芽が伸び始めるころから土に還っていき、豊かな土をつくってくれます。
それは草木だけでなく、虫や小動物たちのすみかにもなります。
落葉を見ると、心がほっかり温かくなります。
季節風が吹いて、気温は寒くても、落葉を踏んで歩くと、心は温かくなります。
それは「寄り添うもの」であるからです。
自然界は寄り添って生きつづけます。
人と人も、寄り添って生きていきます。
それが生命の原理です。