手作り、木のおもちゃ


無垢(むく)の木で作ったおもちゃ、
木の肌触り、なんともやさしい触感、
2歳の孫は電車が好きで好きで、
だから木の電車のおもちゃを作って送ってやろう、
そう思ったら、体が動いていた。
ぼくは木が好きで、
納屋などを建てたときにできる木っ端も捨てられない。
また何かに使えるだろうと、ためこんだおいた種々の木の切れっ端、
それをひっぱりだして、
鉋(かんな)で削り、木の表面をすべすべにして車体を作り、
車輪は、そばを打つときに使う丸棒を輪切りにし、
真ん中に車軸を通す穴を錐(きり)で開けた。
車軸も木を使った。
車両と車両をつなぐ連結器は、?形のヒートンを買ってきて取り付けた。


新幹線の車両を思わせる木のおもちゃのできあがり。
窓もドアもない、塗料も塗っていないシンプルそのもの。
だからよい。


無垢の木のおもちゃ、
人間の祖先は樹の上で暮らしていたから、
木はなつかしい。
木は心をやわらかくする。
子どもが最初に出会うのは、木のおもちゃがいちばんいいと、
熱烈樹木ファンのぼくは思っている。
子どもが木に触れば、
木のぬくもり、やわらかさ、やさしさ、いのちが、
幼い子どものやわらかな指をへて、
体全体にしみこんでいく。


おもちゃを作らなくても、
子どもは木をおもちゃにして遊ぶ。
それが人類の長い歴史だった。
木の枝があれば、それをおもちゃにして遊ぶ。


無垢の木のおもちゃ、
引っぱってもいいし、押してもいい、ころがしてもいい。
ドアも窓もないからそれを想像する。
遊びは想像してこそ楽しくなる。
連結器は、つなぐことの練習になる。


もっと早く作って贈ればよかった。
プラスチックのおもちゃに出会う前に、
原初のおもちゃを幼い原初の身体にふれさせたかった。


ちょっと遊んで、また別のものに興味をもって遊ぶ。
それでよい。
一度触れた木の感触は指が覚える。
それでよい。


今日送った、東京へ。
ついでに我が家でとれたゴーヤとジャガイモとシシトウを少しばかり一緒に入れ、
もうひとつ、「どんぐり」の絵本を1冊、
宅配便の箱なかへもぐりこませた。
山のどんぐり、いろんなどんぐり、
芽をだして木に育つ。


暑い東京の、家のなか、
晴ちゃんに妹が生まれ、晴ちゃんの気持ちもいろいろ、
ママもたいへんだろね、
孫よ、
木の列車をひき、
ひとりで遊んで、
どんぐり絵本、見ろや。